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原初の星  作者: 煌煌
第三十四話 シンカ
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再会

 ヴァンの風が止んで数分。彼が倒れたことで雲は晴れ、役所を目指し飛ぶ僕の背を月光が照らす。しかし生温い空気は二人の女神の衝突で弾け、威圧感が周囲を凍てつかせる。

 耳に届く低音の澄んだ鐘声。身を震わせる冷たい波。近付くほど両者とも勢いを増す。




 役所に着くと建物は崩れ去り、瓦礫だらけの空間が広がっているのみ。パールは僕より高い位置でトパーズと戦闘中。二人の攻撃がぶつかると裂け目が生まれ、今にでも別世界への扉が開きそう。しかし、彼女たちはまだ僕の接近には気付いていない様子。奇襲での簡単な決着もあり得る。

 想像剣でビームを形成。最高速でトパーズの背後を取り、奴の頭目掛けて左から水平に斬った。なのに手応えがない。


「後ろに目を付けないなんてあり得ナイノ。新入りクンは、身に付ける前に死んじゃうのカナァ?」


 背中から聞こえる嘲笑う声。今まで感じていた冷気までもが凍りつく。判断を誤れば、待っているのは死。みんなの想いに沿えず。パールの期待にも応えられない。


「そんなのお断りだ!」


 トパーズが言ったのは、さっき僕がやったこと。必要な分だけ空間認識を広げる方法。背中の気配を探ると、奴は頭に突きを放ってきている模様。当たらない位置へ最低限だけ首を動かす。顔の左側を死線が掠め、頭から足の爪先まで左側だけに冷や汗が噴き出た。

 けれどまだ、生きている。しかし反撃する時間は今はない。気持ちを優先しては、命を拾えた意味もなくなるだろう。だから距離を取って、チャンスを待つだけ。


「ふゥン。流石はパールの騎士ってコト? 完全に目覚める前に攻めて正解だったワネ」


 パールの横に立ち振り向いた僕に、目だけ笑わせた不気味な顔を見せたトパーズ。髪と肌の色以外はパールと同じなのに、精神の差だけで纏う雰囲気は全くの別物。

 右側に在る甘く暖かな楽園とは、比べられはしない。


「トパーズが消滅するまで、神覚(じんかく)は展開したままにするんだ」


 聞きたかった澄んだ音色。幾百万という年を経た数日ぶりの再会は、もう一人の女神の存在で思うような物にはならなかった。

 本当は彼女を感じた時間だけ、彼女の姿を見ていたいのに。




 しかし僕の願い事は後回し。最優先すべきはトパーズの打倒。終わりさえすれば、溢れ出す想いをパールに伝えることもできよう。


「分かった。でも、神覚って何?」


 僕の反応に明らかな不満の顔を見せたのはトパーズ。腕組みをして目を瞑っている。小さな身長も相まって、子供のように見えた。


「自分を中心に周囲を探っているだろう? 私たちが母から戴いた、第六感という物だ」


 島でパールを追い掛けた時の光景が脳裏に浮かぶ。背中に目が付いているかのように、並ぶ木々の枝をすり抜けて飛ぶ彼女の姿が。

 できる気がするという感覚でやっていた。けど実際に先輩二人がやっていることなら、僕にだってやれるハズ。要は集中力の問題。


「うん。今度こそ分かった。他にも聞きたいこと、話したいことはあるけど。今は目の前の敵を倒さないとね」


 僕の横でパールが頷く。神覚を展開した今だから分かること。二人の想いは同じ。




「漸く再開ダネ。くだらナイ話の続きハ、お母様の下でやるとイイ」


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