黄と青
何度か素手での攻撃を行った。目の前には鎧を破壊され気絶している数十の敵。全力に程遠い状態だが、一つ分かったことがある。繊細なコントロールを怠れば、本気を出さずともカラル全体が消し飛ぶ。
パールは戦闘時にも注意を払う。だけど、トパーズは余裕がなくなれば何をしでかすか分かったものではない。僕の限界を知ることも大事。けれど今、最優先すべきは金の女神に星が破壊される前に決着をつけること。
なら僕の次の行動は決まり。時間を掛けずに一撃で目の前の全てを行動不能にする。
対処法はトリーさんの分身体と一緒。敵にのみ有効な剣で薙ぎ払うだけ。イメージするのは、カラルを包むほどのビームの刃。
右への水平斬りは、建物や市民には被害を出さずに敵だけを強襲。鎧のみを破壊すると命を留めたままエレバーの兵は地に伏した。
「本当に一瞬だったな。レンのできる限りは俺の想像もできないくらいになった訳だ」
まるで僕の戦闘を初めて見た時のように、興奮した様子のキハの声。振り向いて映った彼の顔は、耐光処理のなされたゴーグル越しにも眩しく見えた。
「でも僕にも自分の限界が分からないままに終わらせたから、色々と気を付けないとね」
夜中の太陽に向けた苦笑い。すると、彼の隣に立つセイラちゃんからフォローが入る。
「気を付けるべきことが分かったなら、進歩したってことでしょう? なら大丈夫だよ」
穏やかな微笑みは、僕を落ち着かせようとしてくれたものだろうか。違ったとしても、二人の親友からの暖かい気持ちは、未来への不安を和らげるに足るもの。
ほんの僅かな時間ではあるが、二人と話すことで落ち着きを取り戻せた。次は全員の力でカラルの人たちに平穏をもたらす時。
「私とキハは怪我した人たちを安全な場所に連れて行くわ。その後で合流するから」
そろそろアグルさんたちの所に向かおうと言おうとした僕。しかしセイラちゃんに先手を取られた。確かに放ってなどおけないし、誰かが担う必要がある役目。
「分かった。先に行って待ってるよ」
僕の返事を聞いた二人は、エレバーの人を片手で担ぐ。道路を封鎖状態にしている気絶中の人々。合流まではしばらく掛かる様子。
次の戦場に向かう前に、状況確認。動いたことで探知範囲が変わり、町の外に警察隊の姿が見えた。父さんと模擬戦人形を先頭に、国境付近に陣を敷いている模様。今の僕の力を写す彼女。更新に行くのも選択肢の一つ。けれど現在地から一番近いのはアグルさんとイオンさん。既に戦闘は始まり、斬り結んでいる状態。敵がフレアの部隊だけに、予断は許されない。
「キハとセイラちゃんは無事。怪我人と気絶した人を救助してから合流するって。僕は今からアグルさんたちの戦闘を終わらせて、君の所に向かうから。あと少しだけ待ってて」
聞こえているかも分からない通信を彼女に送ると、僕は親友たちの頭を越えて、燃える闇夜の空に舞う。