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原初の星  作者: 煌煌
第三十三話 覚醒
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燃える町で

 パールからの返事はないまま。だが戦闘はまだ始まっていないハズ。もしかすると通信機になんらかの不具合が起きているのかも。何にしても、一刻も早く合流したい。




 キハとセイラちゃんの居場所までは、倒壊した建物が行く手を塞いでいる。無理に陸路を進むこともできるが、パールの力を使えるならもっといい方法があるだろう。

 空から見下ろすと、町並みに以前の面影はなかった。ほとんど崩れた建物。燃える道。血を流し逃げ惑う人々。けれど倒れている者がいないのは、警察のおかげか、キハたちの身を挺した援護の成果か。




 見下ろした状態でも視界に収まりきらない敵の群れ。千人は軽く超えているかも。数の差は親友たちを追い詰め、二人は後ろに怪我人を庇い撤退もできない模様。

 黄金を基調に赤と青のラインが入った鎧を着た敵が、進む度に地形を歪めながらセイラちゃんとキハに迫る。でも、二人をやらせる訳にはいかない。聞こえていたか分からないけれど、大切な人と約束したのだから。

 今の想像剣なら離れていても対処は可能。少なくとも、見えている限りは。イメージを選ぶ。視界内の敵、全てを貫くビームの雨。

 定めたモノを押し付ける。だけど、女神の誓約の下に命までは奪えない。だからカラルの道にエレバーの人々がただ倒れ込むのみ。

 自分で広げた着陸地点に降下。二人の前に立つと、背中に懐かしい声が一つ。


「おかえり。親友」


 前方に意識を向けながら後ろの彼を見た。涙ぐむキハと、嬉しげな顔の親友の彼女。僕は二人に右手の親指を立てて帰還の挨拶。


「もう。ただいまの言葉も忘れたの?」


 格好を付けたつもりが、ありもしない忘れ物グセをセイラちゃんに指摘された。慌てて帰還の挨拶をやり直す。


「ただいま。二人とも」




 本当は久々の再会を喜びたいところ。だが今は先にやることがある。


「後ろの人達を見てて。すぐ終わるから」


 今の自分にできること。動ける限界を知る必要がある。先に進むほど、敵の力は際限を持たずに増すのだから。


「あいつら一人一人が銃弾よりも速いんだ。俺たちも手伝う」


 キハからのありがたい気持ち。だけど。


「ありがとう。でも僕のできる限りの最善を覚えておかないとだから」


 もう少し話そうとした瞬間。前方の気配が動いた。衝撃波を撒き散らし町並みを潰す。パールやご先祖様たちが作りあげたモノを。

 僅かな怒りに体が反応。先頭の腹へ肘打ちすると、続く三人に回し蹴り。先ほどの攻撃も今回も、瞬時に複数を倒した。なのに敵に反応が見られないのは、彼らに意思と呼べるモノが残されていないからだろうか。


「服に着られるどころか、操られてるのか」


 別に笑ってもらえるとは思ってなかった。けど、全くの無反応は少し傷付く。例え相手が虚ろな目をした人たちだとしても。


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