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原初の星  作者: 煌煌
第三十一話 始まりの星
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パールの中で

「早く起きなさい」


 気を失っていたのか、眩しさに目を瞑っていただけなのかは分からない。けど次に視界に映った光景は、何一つ無い白い空間。

 そして、ただ一つ存在する大きな女性。


「お母様おはようございます。今日はなんのお話をするのですか?」


 僕の意思とは無関係に動く口。別人の声。幼い女の子が、澄んだ心を表すような響きで母親らしき存在に問い掛けた。


「今日はお前の三人の姉について教えよう。まずは一人目。ルビー・アッシュ。彼女には創造の火を持たせた。その力で自身を守る砦を築き、雑用を押し付ける奴隷を生む」


 母親の声に合わせ映像が脳内に流れ込む。直接頭を弄られるような感覚。気持ち悪さに耐えていると、赤い長髪の美女が映った。


「欲望の赴くままに過ごしていた彼女だが、何かを契機に奴隷が争いを始め、城は崩壊。しかし、私の力を使わねば死ねぬ身。その後も何度も繰り返すエラーに悩み続けておる」


 自身の娘の話のハズ。なのに、まるで遊び道具が不調だとでも言いたげに不機嫌な様子で語る母親。僕とは関係のない存在。でも。彼女の機嫌を損ねることは破滅を意味する。と、本能が警報を鳴らす手を止めない。




「続いては二人目。サファイア・ヘイル」


 僕を。いや、僕の体を見る目は、不自然に作られた優しさで覆われている。すると今度は、青い短髪の少女の姿が流れ込む。映像の中の彼女は果てのない海を眺め、寂しげな顔を浮かべていた。


「彼女には無尽の水を持たせた。世界は海で満ち、生きるのに不自由することはない」


 母の言葉とは裏腹に、頭の中の少女は空中から海を眺め寂しげな顔を崩さない。


「だが一人では寂しいと、生命を作り出す。最初は幸せに暮らしていた彼女。けれど自身とは違い、すぐに死ぬ生命体たち。喪失感に耐えていると、彼女の世界の生命体もエラーが出始めた。死ぬのは神がいるからだと意味の分からないことを唱えながら彼女を攻撃。だから結局。彼女は一人きりである」


 白い世界が薄く黒に染まる。母親の苛立ちが、宇宙の色を変えたのだろう。驚くようなことではない。だって僕が接しているのは。




「最後はトパーズ・ヤッド。彼女は二人の姉の世界で起きたエラーを、最初から与えた上で手下を作り出した。そんな彼女に持たせたモノは。変化の土」


 知っている人物が現れた。そしてトパーズを姉として紹介されているということは、声から薄々気付いてはいたが、体の主はパールだろう。今いるのは、彼女の記憶の中。

 僕の動揺なんて気にも留めず。母親は娘の紹介を続ける。次第に暗くなる世界の中で、トパーズの銀色の髪だけが輝きを放つ。


「土の力で従わぬ者を恐怖で抑え込む。最初は上手くいっているように見えたが。お前を生み出したことからも分かるであろう?」


 失敗した後なのか、寸前なのか。何にせよ漆黒の闇が永遠と続き、呼吸の自由も許さぬ世界。彼女の機嫌の悪さは嫌でも分かる。

 顔も体も見えない母。女性だと思うのは、声や頭に流れ込むイメージに依るモノ。


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