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原初の星  作者: 煌煌
第三十一話 始まりの星
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世界を包む輝き

 パールが眠りに落ちて一時間。テーブルの上に想像剣とゴーグルを並べ、世界で僕だけが見られる三つの輝きを眺めて過ごした。


「そんなに見つめられると、流石に照れる。と、前なら言っていたんだろうな。けれど、今はもう心地良いよ」


 仰向けに寝たまま顔だけを僕へ向け、また一つ新しい輝きを生み出したパール。優しく穏やかな光が、部屋の空気も明るく変えた。

 起き上がろうとするパールの背を支える。しかし今回は僕の助けがなくても、別に苦労はしなかっただろう。と、思えるほどに回復した様子の彼女。けれど眼前で勢いを増した輝きを見ると、自分の手を褒めたくなった。


「本当に、レンは優しいな」


 僕が優しいのだとすれば、パールの笑顔を少しでも長く、多く見ていたいから。だからきっと自分のため。仲間たちと助け合うのも同じ。みんなと一緒に楽しく生きていたいと思うから。全ての人を幸せにできるのなら、迷わずにできることをするだろう。だけど。世界中の人たちと仲間の一方を選べと言われれば。今の僕は迷わずに仲間を選ぶ。


「ううん。僕なんかより、パールの方が断然優しいさ。僕が優しくなれるのは、君や仲間が近くにいてくれるからだと思う」


 真剣に考えて返事をしたのに、彼女は意外にも呼吸と共に笑い声を漏らしただけ。


「私はずっとレンを見てきたんだぞ? もし私がいなくても。レンは間違いなく誰よりも優しい、格好いい男だったよ」


 穏やかな表情に戻ったパール。なのに言葉の持つ説得力は、僕の考えを消し飛ばす。

 隣にいてくれるのが、パールで良かった。と、思った瞬間。目に見えて分かるほど紅く色付いた彼女の顔。


「と、とにかく! 万が一の場合は私が鎧を破壊してでも助けるから! だから。私達の絆の強さを確かめさせてくれ」




 ゆっくりと間を置いて話し終えたパール。最後の言葉を口から出した時には、既に普段の顔色に戻っていた。


「うん。けど、もしもが起こらないように、僕も全力でできることをするから」


 返事に頷いた彼女を見た後で僕はゴーグルを手に持つ。着ける前に一度深呼吸。そして頭に乗せると、左右から下に引っ張った。

 ゴーグルの装着完了。いきなり何か、試練のようなモノが起こるかと思っていたのに、身体にも視界にも何一つ変化はない。


「気持ち悪いとか、頭が働かないとか、逆にやたらと気分が高まるとかはないか?」


 パールの声の聞こえ方も、特に変化ナシ。気分が高まったりも、問題はなさそうだ。


「何一つ変わらなくて、逆に少し不安かな」


 首を傾げ、肩を竦めながらの回答。パールのことだから、能力の付与に失敗したとかはないと思うが。頭を締め付けられる感覚さえないし、信じられないほど適合したのかも。




「大丈夫そうだな。けど念のため鎧の展開は外に出てからしよう」


 漸く笑顔を見せたパール。胸の前で腕組みすると、視線を僕から外に移して合図。

 彼女の後に続いて外に出た。鼻を満たしていたイチゴの香りが、広い世界に溶け込む。やはり今のところ何一つ変化はない模様。


「じゃあ最後に鎧を着けてみて、二人で旅館まで歩いて帰ろう」


 予想外の状況に、お気楽な提案をしたのは僕。けれど目の前の女神は嬉しげに頷く。

 なら最後の確認といこう。スイッチなどはなく、鎧の着脱も頭で考える。新装備ということで、改めて意識を集中。

 途端に甘い香りが広がった範囲さえ超えるほどの光が溢れ、レンズ越しの彼女が歪む。


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