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原初の星  作者: 煌煌
第三十一話 始まりの星
152/180

二人の魔法

「うん。そうだよな。レンと私なら、きっと大丈夫」


 僕だけでなく、自分にも言い聞かせるように一言ずつ噛み締めるように話したパール。表情から不安は消え、凛とした眼差しが成功の未来を射抜く。


「僕はいつだってパールを信じる。だから君も僕のことを信じて。絶対に大丈夫」


 僕の中には失敗した場合への恐れはない。もしも人ではなくなっても、パールの気持ちや痛みを知ることができる。今より大切な人のことを理解できるのは、寧ろ幸せなこと。


「ここぞというときには、いつも前向きなんだな。だからこそ私はレンを好きになれた」


 両手を放した彼女の顔には、月にもお日様にも負けない輝きが戻っていた。


「ゴーグルを借りるぞ」


 もう一度近付いた彼女の両手が、優しく頭に触れる。そしてゴーグルを取ると、距離を空けて光を放つ。けれどいつもとは発光の色が違う。パールの髪を思わせる金ではなく、想像剣や仲間たちの装備を連想させる七色。銀の周りを赤・茶・黄・緑・青・ピンクの順でフチ取っている。

 ゴーグルの色にも変化が。レンズ周りには銀。他の部位は全て僕の髪のような赤色に。

 色が変わっただけでは儀式は終わらない。依然として彼女は輝き続けている。しかし。なんだか疲労の色が見え始めた。

 パールの力は彼女の内に湧いてくるモノ。そして原初の星へ蓄え、必要な分を自身か石から引き出す。というのが今までの説明から僕の頭の中にある魔法の流れ。恐らく神の力を写すのも基本的には同じだろう。ただ一つパール自身への負担の程度を除けば。

 近付くのは危険だろうか。けれど辛そうな表情を見ていると、せめて体を支えるくらいはしたいと思った。だから眩しい光の中へと僕は溶け込む。




 中に入ると、視界を埋め尽くすほどの光は姿を消した。外から眺めて予想していたモノとの違いは他にない。パールにとって立っている方が良いのか、座っている方が良いのかは分からないけれど。心の声に従って、彼女の背中へと手を伸ばす。

 何か劇的な変化が起こるでもなく。背中を支えること数分。僕たちを包む輝きは勢いを弱め、最後には彼女の内へと納まった。


「一瞬。領域に入ってきた時には驚いたぞ。けど、ありがとう。多分だけど、ゴーグルと鎧が崩壊することはない筈。第一段階は成功と言える」


 話す途中で制御を失ったパールの脚。背中を支えるだけでは、全身は庇えない。だから思い切って抱き上げた。すると眼前に現れた彼女の顔は弱々しい声と同様に、片目を瞑り疲労度合いを表す。

 なのに口許だけは満足気な笑顔。


「お疲れ様。なら次は僕が頑張る番っていうことだよね。絶対にパールの気持ちを無駄にしたりしないから」


 話しながらコテージまでパールを運ぶと、ベッドに優しく寝かせた。すると彼女は右手に持ったゴーグルを僕へと突き出す。


「着けるのは、せめて私が起きてからにしてくれ。次は私が支える番だろ?」


 疲弊した状態でも気遣ってくれるパール。ゴーグルを受け取り頷いた僕を見ると、安心した様子で眠りに就いた。本当は一刻も早く試したいという焦りもあるが、何よりも優先するべきは彼女の想い。

 今は安らかな寝息を立てるパールの姿を目に焼き付け、自分の出番に備えるとしよう。


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