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原初の星  作者: 煌煌
第三十話 わがまま
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新生

 ベッドではなく布団で眠りに就いた翌日。差し込む朝日に目が覚めた。なのに起き上がる気力が湧かないのは、慣れない布団のせいでも上から掛かる力のせいでもない。

 珍しく僕よりも深く眠る。穏やかな寝息を立てる女神様の顔を眺めていたいから。




 パールが起きたのは三十分後。しかし僕が起き上がったのは、更に三十分経ってからのことだった。一度立てば昨日よりも慣れた体は機敏に動く。問題は寝起き。一人では未だ布団の中だったかもしれない。

 パールの後を追い廊下に出る。急いでいたため壁に激突。顔面を擦っていると、階段の手前で待っていた彼女が心配して駆け寄って来てくれた。指の間から見えた表情からは、昨日の不安は窺えない。


「この建物の壁は、色は違っても皆の武器と同じ素材だ。だから気を付けてくれ」


 頭を擦るパールの言葉に何度も頷く。元気を取り戻し、廊下を通り抜けると階段に足を置いた。一歩目は問題なかったのだが、二歩目を上げた途端に天井で頭を強打。やたらと体が軽い。本当に気を付けなければ。




 広間に入ると全員揃っていた。イオンさんが僕の頭を見ながら、心配そうな表情で駆け寄る。もしかして腫れているのだろうか。


「パールさん傷を治す薬をお願いします」


 痛みは感じないけれど、パールの薬はよく沁みた。するとイオンさんが消しゴムを持つくらいに人差し指と親指を広げ、僕の目の前に突き出す。


「コレくらいのタンコブができてました」


 いくらなんでも大袈裟だと思ったが、目の端と口角を下げたイオンさんの表情が本当のことだと告げている。


「ごめん、ありがとう。部屋を出てから体が軽くて、どうにも言うこと聞かなくてね」


 眉を下げると肩を竦めてみた。言葉と動きで感謝を伝えられただろうか。


「他に怪我をしている者はいないな。じゃあ朝食の後で昨日と同じ訓練をしよう」




 朝は簡単な物を。ということで、パールの手から出されたパンを頂く。昨日の話を思い出すと、改めて特別なコトなのだと感じる。

 何の変哲もないトーストに感動したあと。いつも通りの基礎訓練の時間。押さえられる感覚が全くない状況に、スクワットまで終えても二十分。負荷の掛かっていないときより早くなったような。けれど一人でマラソンというのも寂しいと思い、みんなが終わるまで続けると五百回ずつを突破。なのに、まるで疲労は感じない。

 マラソンのために旅館の外へ。仲間たちも体の軽さに驚いている様子。みんな飛び跳ねて喜んでいる。だけど僕の場合、旅館の一階との違いはあまり分からない。実感できるとしたら、鬼ごっこを始めてからだろう。


「じゃあ昨日と同じように、私が力を使って逃げる。皆はそれを追う。捕まえたら終了。では、始めよう」


 少し見慣れたパールの宙に浮く姿。昨日と違い、僕の背中を押す人はいない。仲間たちも自分自身の成長を確かめたいのか、先頭が誰かも分からないほど同時に飛び出す。


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