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原初の星  作者: 煌煌
第二十九話 二人の心の光
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彼女たちの秘密

 初戦を終えるとパールたちの不調も回復。昼食を出して貰うと休憩も兼ねて頂く。食後の訓練は模擬戦の連続。トリーさんの分身体には毎回一体彼女自身を模した物が混ざり、僕を惑わせた。

 日も落ちてきて、今日最後の模擬戦。毎回トリーさんに気付かない内に接近されて負けというのが続いている。ラストくらい勝ってパールに良いところを見せなければ。


「日が落ちたら中に入って体力作りだ。大体五分というところか。では始め!」


 パールは模擬戦に参加しない様子。負けが続いているのに、最終戦も一人対五人。神の力を使わなくても、彼女が横にいてくれたら心強いのだけど。




 贅沢な考えをしている暇はない。パールの合図と共にトリーさんが分身を作成。キハは後退。セイラちゃんとイオンさんは左右から挟撃を図り、アグルさんが二人の後に続く。

 視線はキハを捉えたまま。飛来する弾丸を確実に躱し、セイラちゃんの剣は熱で感知。左から迫るイオンさんは風刃剣の起こす風で攻撃の軌道を読む。問題は水刃剣。山の上の環境では水の作る微かな冷気を感じ取るのは不可能に近い。だから三人の初擊を避けると距離を取る。

 全員を視界に入れていたハズ。なのに平然と背後を取るトリーさん。毎回一瞬でも気を抜いた途端に現れる彼女。今回はキハの追撃を受ける覚悟で後ろに気を配っておいて正解だった。着地までの僅かな時間だがイメージを固める。




 想像剣で着地位置を右にズラす。キハからの追撃にはバリアのイメージ。そして左足を軸に回転。戦域を覆い尽くすほどのビームの刃で薙ぎ払う。

 当然攻撃力を持たないように想像したが、当たった四人は動きを止める。


「気配を殺すのは得意なの」


 たった一人。またしても背後から首元へとナイフを宛てがうトリーさんを除いて。




 最終戦は気配の消し方云々ではないような気がする。もしかすると能力について、まだ秘密にしていることがあるのかもしれない。


「ゲーラはナイフとの相性が想像よりも良いらしいな。他の皆も最初よりも慣れたように思える。明日からの訓練が楽しみだよ」


 パールが嬉しそうな顔でトリーさんを見て微笑む。すると褒められたというのに彼女は何故か驚いた様子。


「レンは。武器との相性なら誰にも負けてはいないし、身体能力の伸びも良い。時間さえあれば、本当に誰にも負けないようになれるだろうな」


 一瞬トリーさんに意識が向いていたが、隣にパールが来ると彼女の言葉に集中。今日の訓練の感想を素直に喜ぶ。




 旅館に戻り腕立てを終えると夕飯の時間。上から押されるような感覚にも多少は慣れ、広間で仲間たちとパールの料理を食べる。


「明日の晩御飯は私も一緒に作りたいな」


 食後の微睡みの中で、パールに話し掛けたのはセイラちゃん。すると他の女の子たちも彼女に続く。料理は得意とも言えないけど、僕も一緒に作った方が良いだろう。


「じゃあ僕も」


 言いかけた僕の口を塞ぐパールの指。


「レンは美味しそうに食べてくれたら良い」


 優しい微笑み。ならお言葉に甘えようかと考えもしたが、疲れているのは女の子たちも一緒。なら微力でも助けに。


「私の場合。レンにご飯を作るのは、趣味のようなモノだから。何かしたいなら身体でも鍛えて待っていてくれ」


 なら明日の晩御飯はキハとトレーニングをしつつ待つことにしよう。何よりも強くなることが今は大事。期待に応えられるように、僅かな時間だとしても修行に励むんだ。


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