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原初の星  作者: 煌煌
第二十九話 二人の心の光
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新たな刃

 キハと一緒に外に出ると、パールとセイラちゃんが顔を真っ赤にして地面に座り込んでいた。心配して近付こうとすると、彼女たちとの間に立ち塞がるトリーさん。


「二人は温泉でのぼせただけだから。休んでいたら直ぐに良くなるわ。だから先に訓練を始めておきましょう」


 小柄な体を跳ねさせて僕たちを止めるが、隠そうとしている二人の姿は見えたまま。目を逸らしたパールの様子が脳裏に焼き付く。


「本当に大丈夫?」


 トリーさん越しの僕からの質問に首を縦に振る彼女。なら仕方ないかと視線を目の前に移す。すると映ったのは不機嫌な顔。


「レンくん対キハくんと私での模擬戦を行うからね。相手を負傷させる攻撃はナシ。それ以外には特にルールはないから」


 片眉を上げたトリーさんがキハに手招き。湯船で温まった体を冷やす高所の風が吹く中で、二対一の模擬戦が幕を開ける。




 よく考えると訓練とはいえ新しい想像剣で戦闘をするのは初めて。トリーさんの分身体とは一撃で片が付いたから、戦闘したとまでは言えないだろうし。などと考えていると、手の中の赤い線が薄くなったように見えた。


「じゃあ、始め!」


 トリーさんの合図と共にキハは後退。同時に目の前に立ち塞がる分身たち。気のせいか薄く緑がかっているような。

 今までと違い、普通の人間程度の動きを見せる彼ら。数十という相手に囲まれると、今の身体能力でも分が悪い。一旦距離を取ろうと飛び退く。空中に浮いた瞬間に、視界の端に飛来するペイント弾を捉えた。間一髪頭を動かして回避。しかしキハの銃は改良済み。次々に迫り来る弾丸。一撃一撃が高精度で、ちゃんと見ているから辛うじて躱せる程度。旅館の陰に隠れる。踊る心臓を落ち着かせると、今の位置だから可能な逆転の一手を思い付いた。先ずは目の前の小石を拾う。

 一つ目。高めに投げた白い石は、瞬く間に緑に着色。軌道を変えられ左に落下。

 二つ目。低めに投げた場合は緑に染まると地面でバウンド。先ほどの石と同じ方向へ。

 次が本番。石を二つ同時に投げると想像剣を展開。キハがいるであろう位置へ、現在地から刃を伸ばす。下の石がバウンド。上の石に接触。一発で両方を撃ち抜いたのは見事。


「げっ! 囮か!」


 手応えはないけど今なら安全に出られる。陰から顔を出すと、目は想像剣から逃げ続けているキハと僕に迫る分身体を映す。

 視界に入れば後は簡単。想像し直すだけ。見えない刃に切り替える。キハを追っていた剣は消え、次の瞬間には透明な切っ先が二人の首元を刺す。

 切り傷も付けることなく勝利。今まで苦戦していた見えない剣が、軌道も威力も想像の通りに展開された。しかもゆっくり考えてる余裕のない戦いの中で。




 新しい想像剣の性能に感動して、試合終了を告げる合図が出されていないことに気付かなかった。油断しきった僕の首元に押し当てられるナイフ。


「自分そっくりな分身が作れちゃった。コレは実戦でもかなり使えそうね」


 強くなれたと浮かれていたのが嘘のよう。不測の事態でも想像できなかった僕の負け。


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