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原初の星  作者: 煌煌
第二十六話 想い
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みんなの想い

 二人からの挟み撃ちで撃沈したキハを他所にパールの説明は続く。


「想像剣に私の力を注ぐのは効果的な強化と言えるが、普通の武器では負荷に耐え切れず崩壊するだろう。だから申し訳ないが、皆の武器は材質の変更ぐらいしかできない」


 パールの力を分け与えられ全員が彼女と同等の戦闘能力を手に入れられれば、エレバーとも渡り合えるだろうと楽観視していた。

 だが今の説明からすれば急成長するのは僕だけ。しかもいくら非常事態だとしても、今までパールが積み重ねてきたモノを壊しても良いものなのだろうか。自分との誓いを破ることにもなるのでは。




「私は。その正式なモノではなくともお姉様の騎士です。だから。例え劇的に強くなる訳ではないのだとしても、みんなを守るための力を、最後まで戦うための力を下さい」


 僕もパールが決めたなら異論はない。けど先に意志を表明したのはアグルさん。すると握り締めた右手のように自身の固い想いを告げた彼女に続き、イオンさんも立ち上がる。


「私には私の目的があります。だからこんなことでレンさんと離れる訳には参りません。なので。当然エレバーからカラルを守る戦いにも参戦させていただきます」


 イオンさんは台詞の割に僕ではなくパールを見つめて話す。アグルさん同様。真剣な顔からは固い決意が窺える。




「ほら。次は私たちの番でしょ」


 セイラちゃんは先の二人とは違い柔らかい表情。未だに痛そうにしているキハを支えながら立つと、彼の発言を待っている様子。

 キハが深呼吸。落ち着いたのか、横の彼女に倣い普段と変わらない笑顔を浮かべる。


「この島で隠れてて平和になったとしても、俺もセイラも後悔すると思う。だから勝てる勝てないとかより、俺はセイラと幸せに笑い合える日々のために戦うさ」


 今回は流れ弾ではなく完全にセイラちゃんをターゲットにした台詞。顔を真っ赤にして照れるだろうという僕の予想に反し、彼女はキハの後に続く。


「キハの言った通り。私たちがここで隠れていてパールちゃんにもしも何かあれば、絶対に自分たちを許せない。それに。私たち友達なんだから、協力するのにイチイチ理由なんていらないよね」


 久し振りに見た気がする。二人寄り添ってキハは右手、セイラちゃんは左手の親指を上に向け立てる息の合った動き。

 あくまでも一緒に戦うことは当然。と言うような二人の笑顔。普段通りの表情は、緊迫した現状をほんの僅かでも和らげてくれる。




「アナタたちも私を許せないだろうけど、私もアナタたちを許せないワケがある。だけどそんなこと以上に。私は私の大切な人を平然とこの世から消し去ったあの女を許せない。だから祖国を敵に回しても、今度こそアナタたちの仲間になるわ。隊長の仇を討つまで」


 今のトリーさんに島に着いた時の茫然自失とした様は見て取れない。ずっと僕たちを欺いていた彼女。だけど今の言葉には、以前のトリーさんには感じられなかった熱がある。本心を伝えているのだと信じられるような、まるで彼女の大切な人の炎のような熱が。




 さて次はようやく僕の番。パールへ思いの丈をぶつける時だ。まずは深呼吸。気持ちを改めて落ち着けよう。


「さて。私たちの決意は表明させていただきましたし、お邪魔虫は退散致しましょう」


 パールを見つめて精神統一していた僕は、後方からのイオンさんの声に振り向く。仲間たちの背中を押す彼女が目に映り、遠ざかる途中に振り返るとウインクして手を振る。


「どうやら気を使わせてしまったらしいな。セイラではなくレコがというのは予想外ではあったけれど」


 言いたいこと、伝えたいことの数はまるで山のよう。本当は聞かなければいけないことだって沢山。だけど、一先ずは。


「みんなが御膳立てしてくれたことだし、改めて。パール。おかえり」


 ただ抱き付きたいだけなのは否定しない。僕の抱擁をもしも彼女が望んでいなくても、今は決して離すことができないのだから。


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