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原初の星  作者: 煌煌
第二十五話 終わりの始まり
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決着

 フレアからの鳩尾を狙った正拳突き。上体を左に反らして打点をズラす。痛むはずだが今は感じない。俺は顎を目掛けてアッパーを放つ。掠めはしたが直撃は避けられた。


「っつ」


 痛いか。痛いだろう。けどパールもゴランさんも今フレアが感じる数倍痛かったはず。


「そんなもんじゃない!」


 今度は俺から正拳突き。当たる場所なんて構わない。力任せに拳を叩き付けるだけ。

 左肩に命中。すかさず連打。しかし微かに衝撃を逃がされているのか、数発当てても奴は倒れない。

 ならばと渾身の右ストレート。顔面に命中する寸前に奴はスウェー。先ほどのお返しとばかりにアッパーが襲う。

 顎を掠めたが直撃だけは免れた。けれど、体勢を崩したことで連打を浴びる。だが奴の動きを真似ることによってダメージは最小限で済む。そしてお互い決定打を与えぬままに殴り合う。




 数分間続いた攻防。気付けば両者ともに、立っているのがやっと。


「打撃戦は素人と、舐めていたのが悪かったらしいな。次は仕留めてやる」


 気息奄々といった状態のフレア。奴の安い挑発が、俺に多少の冷静さを取り戻させる。

 奴の次の一撃は右ストレート。最初と比べ勢いの死んだ拳は、捕まえるのに十分。

 右手で攻撃を外側へ弾く。同時に左手は奴の肘に当てる。すると本来は曲がらない方へ向かうフレアの右腕。


「イタタタ」


 悲鳴を上げるフレアの口と肘。そして体勢を崩すと顔から地面に激突。


「ぐ」


 情けない声を漏らしたフレア。ゴランさんの言う通り。武器を使わずとも相手の動きを利用すれば、転けさせられる。見えない刃を発動できず勝負がついたが、ゴランさんの仇は彼自身の教えによって討ち取れた。身動きを封じた以上、俺の勝利。




「レン! フレアを倒せたのか」


 背中から聞こえたのはキハの声。姿はまだ見えない。だけど生きていた親友。掛け替えのない大切な人たちを失ったが、少なくとも最初の願い通り親友たちは救えた模様。

 けれど。パールがいない世界なんて今更。


「え。お姉様のお部屋が」


 アグルさんの悲鳴にすらならない声。部屋の惨状を見れば誰だって同じ状態にもなるのだろう。だから俺の怒りはまだ燃えたまま。


「コイツがやったんだ。今まで敵の命を奪えはしなかった。けど。コイツだけは」


 怒りに任せて命を奪えたらと考えた瞬間。


「フレア隊長から離れて! その人がカラルの侵攻に反対してなきゃ皆死んでたのよ!」


 ほとんど崩れている役所の入り口。泣き顔を見せているのはトリーさん。


「良いんだよ。ゲーラ。私は彼にとって、許せないことをしてしまったんだからね」


 僕の、俺の彼女を。最も大切な人(パール)を殺しておいて今さら善人面するなんて。


「そんなことで。許されるなんて」


 トリーさんも裏切者。カラルの敵である二人の言うことなんて聞く必要はない。なのに頬を伝う涙が腕を濡らしたからといって、力を緩めたのは俺の弱さだろうか。


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