原初の星とは
原初の星。何故だかとても気になる言葉。一体何なのだろうか。装置の中にある大切な物と言うからには、パールの能力に関係する物ではあるのだろうけど。
「原初の星の説明はしてなかったな。簡単に言えば私の能力を補助する物。世界中の情報も、その石の中に集まるのさ。あと、想像剣の素材としてピッタリといった物を作り出すときには絶対に必要になる」
大体は想像通り。けれど武器の素材を出すためにも必要というのは、今まで何でも作り出した彼女からすると有り得ないような。
「敵の新しい鎧を見て確信した。これから先の戦いにはパールニウムを使った武器が必要になる。だからすぐに取ってくるから、レンはこの部屋に誰も入れないようにしてくれ」
また新しい単語。おそらく想像剣に合うという素材の名前なのだろう。時間があるならもう少しは説明してくれると思うけれど、今は贅沢を言える状況ではない。
だから彼女の願いに僕はただ頷くのみ。
「ありがとう。数分で戻れるとは思うから」
パールは流し目でウインク。バリアを解除すると、中から吹く風に髪を靡かせながら扉を潜る。そして、部屋の光に包まれる彼女。
パールが奥へ進むと扉が閉まり、再び暗闇が辺りを包む。先ほどは怖くなく感じていたお化けの存在が脳裏にちらつく。
「そ、そうだ。皆が無事か連絡してみよう」
わざとらしく出した大声。暗い廊下で反響し、最後の方には自分とは別人の物のように聞こえる。いつもは味方になっていた思春期の想像力。だけど今だけは見えない敵を生み出す恐ろしい存在。攻撃しても倒せない相手を消そうと、宣言通り僕はキハに通信。
「もしもし? キハ。そっちは大丈夫?」
通信に返答はない。念のためにキハだけではなく、他の三人にも同じ内容で連絡。だが全員が無反応。まさかとは思うけれど、脱走犯に負けたのだろうか。
アダマントでも砕けない黄金の鎧。通信に無反応の仲間たち。見えない敵を生み出した想像力が、今度は起こって欲しくない状況を頭の中に映し出す。
「パール。他の四人に連絡が付かない。早く戻って来て」
パールへの通信も届かない。もしかしたら僕の通信装置が壊れたのかも。
部屋の中からは争う音などはしていない。だとしたらパールだけは必ず無事なハズ。となれば全員が無反応なのは、僕の通信装置に異常があるから。きっとみんな無事。
無理矢理な思い込みで今すぐ二階へ向かいたいという気持ちに蓋をする。不安や心配を押し殺して、必要なことを全て終わらせなければ。師匠たちの教えを守って、今回の戦い絶対に勝つ。
気持ちを無理に落ち着かせはしたが、仲間に通信を送るのは止めなかった。最初の連絡から、パールが部屋に入ってから何分経っただろうか。いつの間にか外からも上階からも物音一つしなくなっていて、本当ならゴランさんが合流する頃合い。静寂の存在は、敵が勝ってはいないという証明。なら、何故誰も現れないのだろう。そしてさっきから感じている胸騒ぎと、不安の正体は。
「おや。レンさん一人ですか。パールさんはどこに行かれたんですか?」
聞き馴染みのある声が耳に届く。