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原初の星  作者: 煌煌
第二十二話 ゴランとの再戦
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蓄え

 テレフープを抜けて訓練場に着くと予定の三十分前。だというのにみんなは既に修行の最中。僕とパールは目を見合わせる。


「負けてられないね」


 我ながら月並みな反応。けれど心から思う言葉。僕のリアクションとは違い、みんなの努力は途轍もないもの。一体いつから訓練場に来ているのだろうか。


「今日も遅かったな。もしかして親父さんに特訓でも受けてるのか?」


 キハの推理は当たらずとも遠からずといったところ。僕は先ほどまでの手合わせのことを島の存在だけは話さずに伝えた。すると彼の瞳はみるみる輝く。


「自身の分身と手合わせとかカッコいいことをやってるなぁ。良ければ今度俺にも試させてくれよな」


 右手に握り拳を作り話すキハ。僕のコピー体との模擬戦でも良いのだろうか。なら別に難しいことでもないので今度会わせることを約束した。




 僕とパールが基礎訓練を始めたのは到着の十分後。昨日の走り込みの影響は凄く、マラソン五十周までをこなしても五十分経たずに済む。すると、訓練場に戻るとゴランさんの呼び出し。そろそろ再戦をしても良い頃合いだと判断されたのかもしれない。


「随分速くなったし筋肉も付いた。しかし、まだまだ足りない。全力で殴ればワシを怯ませられる程度にはならねばな」


 予想を裏切る内容。ゴランさんを素手で怯ませられるとなれば、相当な化物。先ほどの予想も、武器を使えば多少のダメージを与えられると考えていたのだ。

 だけど実際は武器を使える状況ばかりとは限らない。素手でもゴランさんに痛みを感じさせられるのならば、いざというときに敵にだって殴り勝てるということ。




 今日も今日とてゴランさんを引いて走る。途中で重みが増したかと思えば、自慢の大剣を地面に突き刺していた。彼の行動にも驚きだが、短距離とはいえ地面を抉りながら進み続けた自分にも驚き。

 昨日と同じ訓練は夕方まで続く。




 足を引き摺りながら帰宅。今日はパールの支えがなくとも歩ける程度の体力は残っていた。昼食後から走り続けた脚。走り方も忘れた人がいる世界に生きているとは思えぬほどに今は逞しい。

 倦怠感を訴える脚を解す。手で揉むと同時に目からはパール分を補給。


「いつも私が料理をしていると見つめているが、自分の部屋で横になってて良いんだぞ」


 言い方が違えば死刑宣告に聞こえたことであろう。けれど呆れ顔の女神様の話し方だと慈しみの気持ちしか見えず、僕に退去を求め話したのではないことが窺える。


「ベッドで寝てるよりもこうしてる方が早く元気になるから。気にしないで」


 僕の言葉で全てを理解した様子。白い肌を薄く染めると、パールは料理に集中。穏やかな時間は瞬く間に過ぎ去り、開いた玄関から両親が顔を出す。

 唐揚げと汁物。ありふれたメニューだけど贅沢なご馳走を頂く。パールの魔法を身体中に行き届かせると、今日も夜の訓練の時間。


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