キミと二人で
翌朝。今日はパールとデートの約束。昨日の訓練の疲労からか泥のように眠っていたのだが、彼女が起き上がるタイミングで目を覚ます。すると、先週と同じお決まりの台詞。
「あ、起こしてしまったかな。今からお弁当の用意をしてくるから、もう少し寝てて」
優しい微笑み。落ち着いた声。平日の疲れを全て吹き飛ばす陽射しは、僕を置いてリビングへと向かう。彼女の言う通りに寝ようかとも一瞬は考えた。しかしエプロン姿でお弁当を作る先週の光景が目に浮かび、眠気との天秤に掛けるまでもなく、僕はリビングへの階段を下る。
頬を膨らませるパールを見つめながら朝の穏やかな時間を過ごす。お弁当のついでにと彼女が作った朝食を頂き、二人仲良くデートの準備。まるで平和な日々を思わせる幸せ。
用意を済ませて家を出た僕たち。二人きりの楽園へとテレフープで移動。瞬間移動可能なのだから、今日も秘密基地の入り口を通る必要はない。二人で話しているうちに目的地に到着。目の前には緑に覆われた世界。
「先週は運動できなかったし、今日は好きに訓練してくれて良いから」
広大な大地。一度探検しただけでは全てを見尽くせる訳もなく、好きな女の子との冒険に期待が膨らむ。
「じゃあ装備以外はここに置いて、お昼まで二人で走ろうか」
僕の提案にパールは頷き、二人きりの誰も知らない冒険が始まる。
揺れる草花。心地よい風。そして何よりもパールが隣にいること。運動するのに最高の環境だろう。遠くに見えていた森の中に入ると、先週の花畑に足を伸ばす。
「そうだ。レンはこの島に家を建てたいんだよな? 簡素な物で良ければ作ろうか」
花に囲まれて休憩中。汗を光らせながら、充実した表情を浮かべる彼女。何気ない感想を覚えていてくれて、嬉しい贈り物の提案。
当然僕は喜んで頷く。大きな家ではなくて二人で景色を眺めながらご飯を食べたり、汗を掻いた体を流せるといいな。
パールが願いを叶えるために輝きを放つ。今回は地下室のときのように島が揺れることもなく、光も早めに消えた。
「あれ? 家はどこに?」
僕の質問にパールは、笑顔で来た道とは逆の方向を指す。森を抜けた先に家を作ったということなのだろう。
二人で彼女の示す場所へ走る。落ち着いた明るさの森の中から抜け出すと、目に入ったのは燦々と降り注ぐ光に照らされる一軒家。
「気に入ってもらえたかな?」
僕が想像していたのは掘っ立て小屋や狭いプレハブ住宅。けれど少し控えめな表情を見せる彼女が作ったのは、立派なコテージ。
「想像以上だよ。ありがとう」
中に入るとベッドやキッチンまであり、少し休むだけには勿体ない設備。平和になって父さんとの訓練が必要なくなれば、パールと二人で泊まりに来るのも良いかもしれない。
いつも応援ありがとうございます。
記念すべき百投稿目です。起承転結で言うと承の部分が続いておりますが、物語に転機が訪れた時に盛り上がれるように一層努力して参ります。