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プロローグ
僕の住む国には貨幣が存在しない。貧しいからという訳ではなく、欲しいものが有れば何でも手に入るからだ。
僕の住む世界には神がいる。それは比喩や誇大表現ではない。神と呼ぶに相応しく、他に表す言葉の無い存在なのだ。
この国の人々は神を機械と呼んでいる。欲しいものを機械に伝えることで、魔法のように願っていたものが現れるのだ。
機械と呼ぶようになってからというもの、人々からの感謝の気持ちは薄れて行く一方。日用品などの良く頼まれる物は、ボタンを押すだけで現れるのだが、願いを口にすることもなく、日常の動作として欲しいものを受け取る行為が、原因の一つであろう。
この星の誕生以来、人々の願いを叶え続けてくれているというのに。
この物語は、僕の願いから動き出す。