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アークは苦笑に眉の間にしわを寄せた。恐ろしく怪訝な顔だ。だがイヴァは笑みを絶やさない。
「大丈夫っ!アークには絶対言わないよ。なんてったって命の恩人だもん♪」
アークはため息をつく。
「昔のことだ。忘れろ」
「無理ぴょん♪それだけはアークのお願いでも聞けないぴょん」
「………」
アークはイヴァのテンションについていけないようだ。
冷徹な仮面は、店の奥にある寝室への扉を開けた。ベットは微妙に離れて二つ。
アークはさらに離したい派、イヴァはもっとくっつけたい派のようだ。
イヴァは鼻歌を歌いながらチェック柄のパジャマに着替える。胸元にはクマさんマーク。あくまでイヴァの趣味だ。ちなみにアークが無言で着ているのは黒無地の地味なパジャマ。が元の背中に大きなウサギさんのアップリケが縫い付けられたド派手なパジャマ。アークはそのウサチャンに気づいておらず、イヴァが勝手に縫い付けたものである。バレた時、どうなるやら。
イヴァはあくびをして、うっすらと瞳に涙を浮かべながら白いふかふかのベットにもぐりこんだ。
「おやすみー…アーク…」
すぐに沈んだように寝息を立てる。
アークは無言でベットにもぐりこんだが、聞こえないことを承知でつぶやいた。
「おやすみ」
明朝。起き上がったのは冷徹の鍵術師。朝日が昇ったか分からぬ時間にアークは武装した。
灰色の基本着を着て、黒光りする鎧を順番につけていく。
「…アー…ク…」
未だに眠っているイヴァの口から寝言が漏れる。アークはイヴァのはだけた掛け布団をかけなおし、鍵を握り締めて外に出た。
無人の店の中で、アークは鍵をまわし解放、さすればそこに黒っぽいアークの姿は無かった。