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こちらの二人もそんなキーユーザーの一員のようだ。少年のほうが、男に優しい笑みを浮かべて話しかけた。
「最近、ネス討伐の依頼が少ないね、アー君」
『アー君』と呼ばれた男は怪訝な表情を浮かべて、少年に言葉を返した。
「その呼び方は止めろと言ったはずじゃないか?イヴァ・ワイズ・ホーン」
冷たく本名を言い放たれたにもかかわらず、少年は微笑みを絶やさぬまま続けた。
「いーじゃん、可愛いし。じゃあ、ちゃんと呼ぶように心がけるよ、アーク」
「…依頼が少ないということは平和な証拠だろ?お前はサーカス団でもやって荒稼ぎをすれば良い」
「あ、今その返事出しちゃうんだ。うーん…サーカスよりもっ食べ物屋さんでアルバイトが良いな。アークはカッコいいから、ホストでもやれば?」
おそらく二人とも悪気は無いのだろう。実際本当のことしか言っていない。
イヴァは寝むたそうに大きくあくびをした。
なぜこのように月が高く上っている時間にダウンレス街を徘徊しているのかというと、いわゆる金づる探しである。イヴァは涙目のままアークに言った。
「ねー…いなすぎるよーネス。その辺に転がってたらサクッと狩ってデータとってお国からお金がもらえるのに〜」
「黙れ」
イヴァが口をつむいだ。アークは常に冷静沈着のクールキャラだが、むやみにつめたい言葉を言うわけではない。イヴァは瞬時に悟った。
アークが目を向けている先にはドロドロとしたゼリー状の固体が徘徊し、異臭を放っていた。イヴァは無言で目を輝かせた。
「チャ〜ンスっ!いつも通り行くね、アーク」
イヴァは首元の鍵を前に構えた。そして鍵をまわして解放。
イヴァの所有する鍵である、『氷床の霜雪』がイヴァに呼応。青白い光が広がり、イヴァの手に細い透ける水色の結晶剣が現われる。イヴァはその剣を出現したドロドロの固体に、ネスに向けて勢い良く投げた。