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妖精の森1

雲よりはるか上空に黄金色に輝く羽を羽搏かせながら飛翔するグリフォンがいた。

奴らはとても気高く、何人にもその背を跨ることはできない。

それが北の大国で崇められている神獣なら近づくことすらできまい。

だが、彼女は違った。

…400年前、ペットが欲しいなと言いものの2分でその神獣を手なずけた。

そんな彼女は今、自分の家族兼弟子を自分の許可なしに連れ去った『人間サイズの羽虫』に罰を与えるべく妖精の森へと向かっていた。

「距離的にあと2時間くらいか…」

風に髪をなびかせながらそう呟く。

「……」

グリフォン後方に置いた魔法袋に目をやる。

「袋に命じる。リグ、レグ、サン、ルナを取り出せ」

シルヴィアがそう言うと魔法袋から4人が放り出される。

「おわぁ!」

「わっ」

「「あら?」」

突然袋の中化から放り出されたので4人とも尻餅をつく。

「バレていないと思ったか?」

胸の前で腕を組み、仁王立ちするシルヴィア。

「この魔法袋の所有権は俺にあるから何が入っているかなど全てお見透視だ。…そんなことより帰ったらお仕置きな」

4人の足元に転移魔法を発動させる。

「っ!」

転移する瞬間にサンが何か言おうとしていたが途切れてしまった。

「まったく…ただでさえこいつはプライドが高いのに認められていない弟子達が乗ったら、理性を失ってしまうだろう。…短気なやつめ」

「GYA!?」

反論するかのように声を荒げるグリフォン。

そうこうするうちにだんだんと高度が落ちてきた。そろそろ到着のようだ。


「よっと」

地面へ降り立ったグリフォンの背から降りる。

「それじゃ先に屋敷に戻っておいてくれ。帰りは転移して帰ってくる」

「GUE-!」

シルヴィアの言葉を理解したグリフォンが羽を再び羽ばたかせ空へ向かっていく。

「さてと、さっさとローズを連れ帰ってやらないとな」

そう言いながらうっそうとした森の方へと歩いていく。

森に入ったときはまだ太陽の日差しが差し込んでいたが、どうやら気づかれたみたいだな…。

「めんどくさ」

敵の力量も測れない羽虫どもが。

そういや以前もこの森に来た時に絡んできたな…確かあの時は精神干渉魔法ばっか使ってきやがったから〖牢獄〗(虫取り用)に入れて放置していたな。

そんなことを思い出していたその時、付近の茂みと木の陰から魔力反応を感知した。

「バレバレだ、羽虫ども!」

そう言いながら〖威圧・軽〗を範囲使用する。

すると茂みと木の陰から2匹?の妖精が飛び出してきた。

「ひーーー!」

「ばけものー!」

飛び出してきた妖精たちはシルヴィアを見るなりそう言った。

「誰が化け物だ」

冷静にツッコム。


しばらくして落ち着いた妖精に話しかけるシルヴィア。

「それでなんで俺を監視していた?」

「ギク!」

バレていないと思っていたのか分かりやすく驚く妖精A。

彼らはまだ完全に羽が生えきっていないから下級妖精だろう。

妖精の種類には様々ある。

神樹から生まれたばかりの妖精、主に下級妖精と呼ばれるやつ。

そしてその下級妖精が進化したのが上位妖精だ。上位妖精に進化する過程は謎に包まれていて、突然変異説や魔物吸収説などがよく唱えられている。

だがこれらの説は間違っている。

下級妖精が上位妖精なる条件は『結婚』すること。

もともと性別不明のやつらが自らの性別を決めることは一生を左右する決断であるためおいそれと決めることはできない。そしてこれがただの『結婚』ならどの下級妖精達はさっさと結婚して上位妖精になるはず。ここが一番の謎で、俺も知らない。

「早く話さないとその背中の羽むしっていくぞ」

「話します話します!」

妖精Aに脅しかける。

「近々、妖精王様が天上妖精の儀をとり行うから森の中には誰も入れてはならないって言われて…入口周辺を見張っていたらあなたを見つまして」

「天上妖精?それは上位妖精になるってことか?」

聞き覚えのない単語に聞き返すシルヴィア。

妖精Bが説明する。

「いえ、上位妖精のさらに上です」

「ほうそんなのがあったとは…」

「それでですね!妖精王様が結婚される方が『愛し子』らしいんですよ」

「『愛し子』?」

再び知らない単語が出てきた。

「ご説明します」

妖精Bがまた出てくる。

「『愛し子』とは、精霊や動物などに好かれやすい体質をもっている者のことです。ごく稀に魔族からも好かれやすい者もいるようです」

「ちなみにその『愛し子』ってこんな顔していたか?」

〖記憶転写〗を使い地面にローズの顔を写し出す。

「この人です!妖精王様にお似合いな人ですよね~」

「(コクコク)」

妖精Aの発言に妖精Bがうなずく。

「その子は今どこに?」

「今頃妖精王様のお屋敷でお眠りになっているはずですが…まさか」

「ああ、すまんな。その子はうちの弟子なんで連れ帰るわ」

「そんな事をさせると思いますか?」

「まぁ、あと3秒もしたら寝てもらうから抵抗するならどうぞ」

「「ZZZ~」」

残念。1秒もかからなかったようだな。

妖精ABを魔物に襲われない場所においてと…

「それじゃ行きますか」

再び森の奥へと進みだす。


「ここだな」

丘の上から妖精族の里を偵察する。

あれが多分さっきの妖精が言っていた王の屋敷だな。

「ん?なんか周りに張られている…」

指先に魔力を手中させ小指サイズの魔力の球を作り、それを屋敷に向けて放つ。

透明な壁みたいなものに当たると魔力の球が霧散していった。

「まじか、あの中は言ったら魔力の使用が不可能になるのか」

だがこの魔法は妖精族じゃ扱うことができないほど魔力の消費が激しいはず。

それにローズが連れ去られるとき、オベイロンだったか?

アイツの後ろにいたやつは…

「考えるだけ無駄か」

別に魔力なくったて俺強いし大丈夫だろ。

「そろそろ行くか」

ローズを連れだしに屋敷へと向かうシルヴィア。


「結構いっぱいいるな」

屋敷に侵入して15分が過ぎたがローズの居場所がいまだつかめていないシルヴィア。

「この屋敷外見と中身全然違うじゃねぇかよ。空間魔法使えるやつがいるのか…」

『闇の羽衣』持っていてよかったわ、まさか覗きするために使っていたのがここまで役立つとは。

「女王様美しかったね~」

「そうよね~、人族なんてもったいないわよね~」

シルヴィアのすぐ横をすれちがった上位妖精がローズのことを話していた。

「ちょっと見させてもらうぞ、〖記憶読取〗」

素早く女性のオデコをつつく。

事に気がつかないまま歩く上位妖精。


「なるほど、これは気づかないわけだ」

先ほど読み取った記憶を頼りに隠し部屋を見つけたシルヴィア。

「〖気配遮断〗〖耐衝撃〗〖耐魔法〗〖暗号化〗et…、どんだけ付与してんだよ」

愛が重いだろあの変態。

「こいつで何とかするか」

そう言いシルヴィアが魔法袋から取り出したのは『万能鍵』だった。

「ほい開いた」

いつも鍵がいる扉とか箱とか力ずくで開けてるからな。

こんなとこで役立つとは…

部屋の中へ入るとそこは寝室だった。

「気色悪い部屋だなぁ」

部屋の中央にベッドがあり、その下の床には変な魔方陣が描かれていた。

「この魔方陣どこかで…」

シルヴィアが床に触れようとしたその時

「〖神樹の牢獄〗」

突如、シルヴィアの足元から木が檻のように生え、シルヴィアを囲む。

「待ってましたよ~シルヴィア。いや、●●とお呼びした方がいいですか?」

「オベイロン…いや、誰だ?」

姿形はローズを連れ去った妖精王オベイロンに酷似しているが”中身”が違う。

「おおっと申し遅れました。私、魔王軍第6部隊副隊長”美食”のゲリオン=ノードルと申します。親しみを込めてゲールとお呼びください」

「美食だと?悪食の間違いだろ」

ふっ、と鼻で笑いながらゲールにそう言う。

「私の信念でもある食を冒涜するのはあなたでも許しませんよ?」

「妖精王を喰っておいて信念も糞もないだろ」

「ふむ…そうですか、この喜びを分かち合うことができると思ったのですが」

そう言い、指をパチンと鳴らす。

するとテーブルとイス、皿にナイフやフォークが出現した。

そしてテーブルの真ん中にはローズが美しくドレスを着こませられ眠っていた。

ローズの姿が目に入った瞬間、シルヴィアがとる行動はシンプルだった。

”ただ殺す”

「死っっっっっね!!!」

床が壊れるほどの脚力ですぐさまゲールに近づき、体をひねり、踵で首を刎ねる。

あまりの速さだったせいでゲールの胴体はそのままの位置で棒立ちしていた。

「1分1秒生き永らえさせておくのも勿体ない」

そう言い終え、眠り姫が待つ方へ歩き出す。





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