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魔力制御

「こいつはちょっとまずいことになったなぁ」

銀髪の髪をなびかせながら顎に手を添えるシルヴィア。

この少女、400年間もの長き時を神に封印されていた。

「GYAAAAAAA!!」

そんな彼女の前にはどす黒い魔力を放つ魔族がいた。

「おい、ジジイ!ルナはどうなってんだよ」

シルヴィアの後ろで立ちすくんでいた魔族と人間のハーフであるサンが問いかける。

「魔力の暴走状態だな、このままいくと理性も失って完全に魔族になって、しまうな」

魔力の放出が過剰になってきてるな…そのせいかルナの体の一部が変化してきてる。

これは早々に決着をつけるしかないな。

暴走するルナの方へと歩き出すシルヴィア。

「シルヴィア!」

赤く染まった髪をしたローズが心配そうな顔で叫ぶ。

「ローズ、それにほかの皆も。これも修行の一環だ、見ていなさい」

完全に理性を失ったルナの前に立つシルヴィア。

「さて、修業開始だ」


・・・この数時間前・・・


「お、皆俺が渡した本には目を通したようだな」

朝、朝食を食べにダイニングへと降りてきたシルヴィア。

「「おはようございます。シルヴィア様」」

メイド服を着たリグとレグだ。

「おはよう二人とも」

目の下にクマができているな。

先日シルヴィアが出した本をすべて読んだのだろう。足取りもたどたどしい。

それにこの二人だけじゃなく他の三人も目の下にクマができている。

だが飯をちゃんと食べているっていうことは食欲はあるな。見たところ健康状態に問題はないし。

「よし皆、俺が出した本は全部読んだようだな。それじゃ朝食を食べて少し経ったら中庭へ来てくれ」

「はい」

「うん!」

「ちっ」

「「了解しました」」

朝食を早めに食べ終えシルヴィアは一足先に中にはへと向かう。


「とりあえず魔力操作から始めさせればいいか」

そう言い、魔方陣を五つ描いていく。

「こんな感じでいいだろ」

たった今俺が描いた魔方陣のの内容は〖魔力安定〗と〖属性感知〗だ。

〖魔力安定〗はそのまんまの意味で、魔力を安定させるための補助的な役割を担うもの。〖属性感知〗はこの世界に存在する、火、水、風、光、闇の五属性のいずれかが自分に合っているのかを感知するものである。

「〖魔力安定〗はいいが、〖属性感知〗そこまで必要ないいんだよな…ま、とりあえずな」

そうこうしている間に少年(弟子)たちが中にはへと来た。

「なにをやるの?」

「た、楽しみです」

興味津々になっている弟子たち。

「修業を始める前に、少しばかり魔法についておさらいをしようか。じゃあレグ、本に書かれていた内容を言えるかい?」

「はい、問題ありません」

変わらない表情で淡々と話し始める。

「魔法とは体内の魔力を駆使して扱うもののことで、魔力以外にも精霊や天使、悪魔などの人外者と契約してその力を有することができる。です」

「ちゃんと読んだようだね。あと、付け加えるとしたら魔力っていうのは生命力と深い関りがある。魔法を大量に使用すると魔力が減る、減った魔力は食事や睡眠といった普段の日常生活で回復ができる」

ポンポンとレグの頭をなでる。

「これから行うのは魔法を使用する際に無駄な魔力を抑える修業と、属性の適性を見ることだ」

「え、なんか地味なことすんの」

サンが面倒くさそうな顔をしてに言う。

「確かに地味だが、魔法が使えているサンには必要なことだぞ」

「なんで?」

「サンが使っていた〖流水斬〗だっけ?あれをもとにお手本を見せてやろう」

そう言ってシルヴィアは魔法袋から一体の人型のマネキンを取り出す。

そしてそのマネキンにサンの〖流水斬〗で切り裂く。が、マネキンには傷一つついていなかった。

「このマネキンはオリハルコン性サン製でできている。当然、無駄な魔力を出しまくっている今の状態じゃこれが限界だ」

「シルヴィア様、オリハルコンは非常に硬く、ドワーフでしか曲げ伸ばしできないと記述されていたのですが…」

リグがシルヴィアから渡された本のことを思い出し、彼女に伝える。

「細かいとこまで読んでるなんてさすがだなリグ」

「当然です」

なんか棘があるのは気のせいか…

「ドワーフしか扱えないってのは単純に彼らの腕力が異常なだけであって身体強化すればだれにでも扱えれるよ。と、話がそれたな」

再びオリハルコン製のマネキンに目を向ける。

「次に無駄な魔力を抑えてやってみるよ」

再度〖流水斬〗をマネキンめがけて放つ。すると、マネキンが綺麗に真っ二つになってしまった。

「!?」

唖然とするサンにシルヴィアが「これが魔力を抑える修業の大切さだ」と伝える。

「まぁやりながら覚えるのが速いだろ、一人ずつ魔法陣の上に立ってくれ」

一人ずつ指導していくシルヴィア。

お、皆筋がいい、これはしばらく楽ができそうだな。

「やるべきことは教えたから、ひとまず二時間ごとに休憩を取りながらやっていこうか」

「は~い」

「「了解しました」」

「頑張ります!」

「へいへい」

各々が魔方陣の中で目を閉じ集中していく。

さてと、その間俺は飯でも作っておくか…


・・・・数時間後・・・・

「おーい飯だぞー」

そろそろ集中力も切れて腹をすかしているだろうと思い、全員のご飯を持ってきたシルヴィア。

そんなシルヴィアにローズが息を切らして詰め寄る。

「シルヴィア、ルナ君が!!」

涙を流しながら叫ぶローズ。

これを見たシルヴィアの脳内にはあることが浮かんでいた。

「まさか!」

先ほどの魔方陣のあった場所へと駆ける。


そして現在に至る。


「魔力の暴走を止めるには気絶させるのが一番!」

そう言い放ち、暴走しているルナの背後に回り込み手刀を与えようとするが

「GAAAAAA!」

身体の左半分が魔族化したせいで皮膚の表面が硬化されているせいでダメージが通らない。

「GUUGYAAA!」

左腕全体が鋭利な刃物のようにどす黒い魔力に覆われていく。

「理性を失っているにしては‘‘魔力の具現化”まで使えるとはな」

とは言うものの、この状態じゃ〖安眠〗も効かないだろうな…

「SYAAAAA!」

左腕を振り上げシルヴィアに向かって振り下ろす。

振り下ろされた左腕を手の甲で横に流し、腹に一撃入れる。

「浅いか」

ひょろひょろだった人間の時の体のつくりとは正反対に拳も入らないほど強化されているルナ。

「っち、手加減が難しい!」

そんな嘆きとは裏腹にルナの打撃が重くなっていく。

「…あれ使うか」

ルナから距離を取り魔法袋から手のひらサイズの針を一本取りだす。

「サン!これ持ってろ!」

針をサンに投げ渡す。

「お、おいこれどうすんだよ!」

「合図したらそれでルナを刺せ!」

「はぁ!?」

シルヴィアの言葉を聞き間違えたのか不安な表情へとなっていくサン。

「大丈夫だ、死にはしない!っぐふぁ!」

サンに話しかけている最中、ルナの左腕がシルヴィアの肩を裂いた。

「「シルヴィア様!」」

「シルヴィア!」

ローズとリグとレグが叫ぶ。

「久しぶりの痛みだな」

そう言い、攻撃を受けた個所に手を当てる。

するとたちまち傷が治っていった。

「AAAA?」

自分が与えた攻撃が瞬時に回復されることに首をかしげるルナ。

「そろそろ楽にしてやるよ。〖空間固定〗」

シルヴィアが魔法を唱えると先ほどまで暴れていたルナがその場から動けなくなった。

「いや~長いこと使ってないと分かんないな」

ルナに近づき、心臓の辺りに青色の塗料で幾何学な模様を描く。

「ルナがその力を扱える日が来るまで眠れ。いいぞ、サン!」

「分かってる!」

合図を待っていたサンが右手に針を持ちルナの心臓めがけてぶっ刺した。

青色の塗料が光りだし、魔族化してどす黒く染まっていた体の左半分が次第に元の肌色の体へと戻っていく。

「よくやったなサン」

「弟のためだ」

元に戻ったルナを見て肩を下ろすサン。

「みんな、今日は終了だ。ルナのことは俺に任せて先に風呂に入ってくれ。飯も作ってあるから食べていてくれ。そして今日はゆっくり休みなさい」

「うん」

「「かしこまりました」」

「…」

表情はそれぞれ違うが皆暗くなってしまったな。


・・・・その晩・・・・

自室で魔族についての本を読んでいると。

「はいんぞ」

サンがノックもなしに部屋へと入ってきた。

「どうした、怖い夢でも見たか?」

「死ね」

「冗談だ」

「…」

少々の沈黙が続く。

「あのさ…」

「ん?」

サンが先に口を開く。

「ありがとよ…ルナのこと」

「どうしたんだ急に」

なんか変なもん食ったか…はっ!俺が作ったキノコのスープにまさか毒キノコが!?

「おまえが今考えてるような変なことじゃねーからな」

シルヴィアの顔を見たサンが怪訝な表情をして言う。

「…俺さ、何もできなかったんだよ。ルナを止めることも、ローズたちを置いて自分一人だけ逃げてしまったんだよ」

「…」

「だからさ、教えてくれ!魔法のこと、魔族の力のことを」

「…力を持つ意味は分かっているのか?」

殺気とも呼べる気配が部屋を満たす。

「過去に力を手に入れ、自己欲求を満たし、最後は破滅に進む奴を何人も見てきた」

ふぅ、と椅子の背に持たれるシルヴィア。

「サン…お前はなんのために欲する?」

「……家族のためだ」

顔を上げまっすぐとシルヴィアの目を見る。

「ルナのためじゃなくて家族か…」

「あんたには家族として拾われたが俺自身がルナ以外を家族として認めていなかった。…でもそんな意地は捨てる。俺がここの皆を守れるようになる。だからそのための力を俺は求める」

生意気なガキというのが最初の印象だったが…

「サン、人として成長したな」

椅子から立ち上がる。

「いいだろう、サンが求めるものを与えてやろう」

「本当か!」

「だって俺、師匠だから」

かっこよく決めるシルヴィア。

「ははっ、少女にそんなこと言われたら笑っちまうじゃねーか」

部屋に二人の笑い声が響く。

サンがさらに成長するきっかけとなった修業だった。


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