表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

プロローグ 過去の不条理

―― 過去 ――


さっきまでの世界が嘘みたいに一瞬で、なんの合図もなく唐突に消えていく。


目の前に広がるのは赤。赤。赤。赤。赤。


1発の銃声の後にただ、あの人の赤い何の変哲もない血が私の頬をかすめ、私の服を赤黒く染め、目の前の地面に広がってゆく。


私はただ ただそこに突っ立って固まることしか出来なかった。するとあの人が叫ぶ。致命傷を負いながらも私を助けようと叫ぶ。私はその声にハッとなり、ただ、がむしゃらに走り出す。全力で走る。今私をつき動かしているのは、恐怖 ただそれだけ。


あの人は大丈夫だろうか、銃を持ったやつは追ってこないだろうか、私は殺されてしまうのか、嫌だ嫌だ嫌だ、そんな感情が渦巻く。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!


そんな風に考えていたら、いつの間にか路地から人通りの多い商店街に入っていた。


色んな人にぶつかって、何度も足がもつれ転倒し、擦り傷を作りながらもそんなのお構い無しに私は一心不乱に走る。止まったら殺される、銃を持ったやつに殺される…!


恐怖で後ろを振り返ることは出来なかった。もしアイツがこっちに向けて銃を放ったら?もうすぐそこまで追いついていたら?

そんな事を考えたら、怖くて怖くて後ろなんて向けなかった。


もう、どのぐらい走ったか分からない。

心の体も疲れきっていた。少し前から壁に手を付きながら歩くのがやっとだ。


もう無理だ、座り込みたい、休みたい、けどまだアイツの姿は私の心に大きい影を残す。

はぁ、はぁ、はぁと息を切らしながら恐る恐る、ゆっくりと後ろを振り返ってみる。

すると後ろには誰もいない。

後半はずっと気力で走っていたようなものだから、もう体が限界を超えていた。


私はヘナヘナと地べたに座り込み手を付く。呼吸が安定しない。息切れが止まらない。ふと、全身が汗でぐっしょりしている事に今やっと気がついた。長袖をまくり、靴下も脱ぐ。

それでも汗は止まらない。滝のように流れている。

だが、そんなの別にいい。やっと、やっと逃げ切る事が出来た…! 今私の中にある感情はそれだけだった。


そしてそこで、私は出会う。1人の悲しい少年と──。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ