表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/24

突然の出張⑤

 4人で戦うとかいうから、それなりの数しか来ないのかと思っていた。


「結界準備出来ました!よろしくお願いします!」


 アランさんが叫んだ次の瞬間、山の上に出てきた影の数に絶句する。

 飛んでいる影だけでも、何十匹いるか分からない。

 ひとつだけ大きい影があるが、それを残してこちらに向かってくる。


「じゃあ始めまーす!」


 バードの軽い返事が通信機械から響く。

 飛んでないやつと戦うのだろうか。


 そうこうしているうちに、飛んでるやつらがすごい速さでこちらへ近づいてきた。

 はやっ。

 え、これもうこっち来ちゃうんじゃないの?


 あわあわしながら後ずさった瞬間、バチリと音がして魔物の進行が止まる。

 ちょうど街に入るあたりで魔物はいったん動きを止めた。

 結界にぶつかったんだろう。


 とか考えてる間に、暗闇の中からいくつかの淡い光が魔物を貫いていく。

 炭鉱の方だ。

 セイナか。


 魔物は攻撃が来た方に向かっていくが、炭鉱の入り口までは結界があって行けないはずだ。

 大丈夫、なはず。


 結界を張っている中心にいる俺達からは、ほぼ遠くの影と形しか見えない。

 一応影だけでも見えるのは夜でも辛うじて見えるのは結界自体が淡く光っているからだ。

 そして俺はあまり目が良いわけでもないので、光の近くに来た魔物も正直良く見えない。

 こんな時に不謹慎だが、セイナの魔法はお祭りの時に役場で上げる火のショーを見ているような感じ。

 何をやっているか分からないバードたちの方は、遠雷を見ているような感じ・・・。

 結界があって魔物が来ないとわかったら、ちょっと緊張感がね。

 すまん、みんな頑張れ。


「ごめん!大したことないけど思ったより数が多くて時間がかかりそう!まだもつ?」

 バードからの通信が入る。

「今のところ大丈夫のようです!」

 アランさんは機械に向かったまま応える。

「こっちも急ぎます」

 セイナの声も届く。


 結界近くの魔物の攻撃は弾かれ、飛んでいる影はセイナの攻撃で少しずつ数を減らしている。

 これ、いけるんじゃない?

 とか油断してちゃいけないよね。


「大きいの来るよ!」

 バードが叫ぶ。

 大きいの?

 そう思った瞬間、今まで近づいてこなかった大きい影が光った、と思った直後に目を開けていられないほどの光と轟音に襲われる。

「うあわ!?」


 何?!

 意味なく通信機械を抱きしめて、それに耐え、恐る恐る目を開ける。

 な、なんともない。

「だ、い丈夫ですか!」

 アランさんが叫ぶ。

「狙われたのはそっち!結界消えてるよ!」

 バードの声が慌てている。

 え?

「すみません・・・!いまので、限界みたいです・・・」

 アランさんの方を見れば脂汗をかき、朦朧としてへたり込む寸前だ。


 淡い結界の光は消え、星と月の光で山が黒く見えるだけ。

 さっきの光で目がくらんでどうなってるのか良くわからない。


 ただ必死で抱えていた通信機械からバードの声がする。

「こっちは逃がさないから大丈夫!セイナちゃん!シェンリー!間に合う?」

 護衛さんはシェンリーっていうのか。

「残りは私が」

 少し聞き取りづらい女性の声。

「間に、合わせます!」

 セイナの声。


 山の稜線の上に見えた影が異常に大きくなっていく。

 近づいて来る、こっちに、一直線に。

 歩くと時間かかるのに、飛ぶと、一瞬かよ。


 見えたのは役場の建物と同じかそれより大きいカラスのような、魔物。

 月明かりに照らされたその羽根は、羽根というにはとても硬そうに見える。

 もちろん脚には太い爪、何故か赤く光っている目。

 それは俺たちの上空まで来ると、一瞬動きを止めて。

 そうして、片方の脚を機械とアランさんの方に、もう一方を俺に向けて、急降下してきた。


 あ、死ぬ!

 なんか最近も同じこと思った気がするけど。


 目を瞑って通信機械を抱き込む。

 そんなことしてもどうしようもないけど、手近なものにすがりたくなるというか。


 ズガアアアアン!


 ・・・あれ。

 でかい音がした割に、なにも来ない。

「ウルスさん!ウルスさん!聞こえますか!」

 抱きかかえた機械からセイナが呼んでいる。


 ふらふらと後ずさると、背中に屋上の手すりがぶつかる。

 横目に見れば、役場の前の広場に、大きな鳥が落ちているのがちらりと映る。

 あ、助かった?

 そう思った瞬間、足がもつれて変な方向に転び、手すりに頭が直撃。


 俺は情けなく意識を手放したのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ