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突然の出張④

 目の前の箱。

 てっきり芸術品っぽい神のなんちゃらとか、そういうたぐいのものかと思っていた。


「これは、機械、なんですか?」

 俺よりも先にセイナが質問する。

「そう。古代の、よくある神が創った機械です。動いていないけれど」

 子供のころに聞くおとぎ話の中で“よくある”やつだ。


 アランさんは俺の方をみてにっこりと笑う。

「というわけで、やってみて」

 顔を見れば、それほど期待はされていないようだ。

「はあ。動かなかったらどうするんすか」

「まあそん時は出来るだけ死なないように頑張るしかないですね」

 少し肩をすくめてわざとらしく言う。


 この人数だけ残されたのは、初めから、ダメだった場合全員死ぬことを予想してということか。

 嫌だけど、俺にはどうすることもできない状況。

 じゃなくてとりあえず叩かないといけないな。


 バードとアレスは何のことかよくわからないという顔をしてこちらを見つめている。

 そりゃそうだ。

「んじゃ・・・失礼します」

 硬そうな四角い箱をぺしり、とたたく。


 しーん。

 とくになんの変化もない。


「うごかないですね」

「そうですね、まあちょっとやってみましょう」


 アランさんは機械?に近づくと何やらあれこれ触り始めた。

「ねえ、どういうこと?」

 バードがこちらに問う。

「あ、実はですね・・・」

 俺の代わりにセイナが説明している。

 2人の反応は「へえ~」っという間の抜けたものだった。

 そもそもあんまり機械には興味がないらしい。


 俺、この為に呼ばれたのね。

 でも、誰でもいいからっていってたような?

「アランさん、俺以外が来ることになる可能性もあったんじゃないんですか?」

 アランさんは機械からこちらに目を上げて何でもないように

「ええ。その時は指名して来てもらいましたよ。誰でもいいとなればあなたが来ることになるだろうとは思いましたし、もし誰か自分が行くという殊勝な心掛けをした人がいればと思いましたが、いませんでしたねえ」

 そういって笑った。

「余計なことを言わずに済むならその方がいいですしね。さて、喜んでください、動きましたよ」

 アランさんの右手が機械に触れると、箱は何やら上部の透明な部分から発光し始めた。

 音はしない。


「!」

 我先にセイナが駆け寄り、装置をみる。

 セイナはどうやら、何かしら機械の技術をもっているようだ。

 ま、やっぱり俺にはわかんないけど。


「ほんとだ・・・すごい」

 俺には見えない何かに目を走らせ、興奮した様子で呟く。


 突然こちらに顔を向けると駆け寄ってきて

「ウルスさんはやっぱり神様なんですか?!」

 キラキラした目で言う。


 いや・・・違うけど。

 神様だったらこんなところで雑用係してないから。

「まあ今の状況に関して言えば神様ですねえ」

 何と答えていいやら困っていると、アランさんが助けてくれた。

 セイナ、そんな目で見ないで。


「とにかく動きましたんで、さっきの話通りにいきましょう」

 バードとアレスが頷く。

「では私達は山の上で待ちます。通信で合図をしますので、その時に結界をお願いします」

「分かりました」

 装置はアレスに頼んで、倉庫から山が見える役場の屋上に運び出してもらった。

 周りに高い建物はひとつもなく、また麓から山の頂上まで遮るものもないため、山のこちら側全体が見渡せるようになっている。


 アランさんと俺は此処で居残り。

 バードとアレスは頂上まで伸びている道路を使い、役場に残しておいたバイクで移動するそうだ。

「セイナは?」

「私は結界範囲ギリギリにいるように言われましたので、街はずれというか、炭鉱の入り口にある見張り台で待機だそうです」

「ちゃんと護衛が付くから安心してね、お父さん!」

 バードはバイクにまたがり浮き上がると、アレスが後ろに乗ったのを確認して言い放ち、すごい速さで飛んで行った。

 便利だな、風のバイク。


 セイナはもう一人の護衛とかいう人が、組合の方で乗せて行ってくれるということでそちらに向かっていった。

 アランさんと2人で残され、あたりが静かになる。


 ああ、星がきれいだなあ。

 これで隣が偉いおっさんじゃなければ・・・。

「まだ時間がありますから、座ってましょう」

 アランさんが椅子を2つ出してくれた。

 何故かお茶とお菓子も持ってきてくれた。


「えーと、俺、あとなんかやることあります?」

「いえ、今はありません」

 会話終了。

 いや、まあ何も出来ないけど。


 しばらくぼーっとお茶を飲みながら、ドキドキしながら待っていると、隣に置いてある通信機械の呼び出し音が鳴る。


「はい、分かりました。ではすぐに」


 アランさんが受けると、そのまま機械の前にたち、再び稼働させる。

 今度は大きな音と強い光が一瞬起こる。


「ウルスさん、その通信機械を持ったまま座っていてください。何があっても落とさないように」


「はい!」

 俺は通信機械を抱くように持ち、山の方へ眼を向けた。



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