初陣part5
「作戦はこうです。まず僕が何も持たずに人狼の射程範囲内に出ます。そして狙撃してくるタイミングを見計らって閉まっておいたフライパンを実体化させて防ぐ。残弾が残り1発になったら僕が閃光手榴弾を投げます。それを〝ただの手榴弾〟と勘違いした人狼はそれを必ず撃つ。そして発光。
そして隠れていた圭汰さんが狙撃、こんな感じです」
「ふむ、なるほど。だが、結構キツい作戦だな。まずお前が人狼の攻撃を全て防ぐ、そして閃光手榴弾を撃たせるのが最低条件だな」
「圭汰さんが隠れてスコープで人狼を確認出来れば可能じゃないですか?こう見えて動体視力には自信があるので防ぐ自信はあります。スナイパーは基本狙撃する時はその場に留まるから閃光で見えなくても圭汰さんなら狙撃できるんじゃないですか?」
「まぁ、俺も狙撃には自信がある方だ。お前の作戦に乗っかろう」
「分かりました。じゃあ人狼を確認出来たら手で合図して下さい」
圭汰さんは黙って頷くと隠れている空き家の2階に登っていく。僕もそれに続いた。
圭汰さんは窓からスコープをちょっとだけ出して
真北にあるビルを見る。
数秒して圭汰さんが右手をちょっとだけ挙げた。
「それじゃあ、行ってきます」
「あぁ、健闘を祈る」
僕は空き家を出る、がまだ勇輝には見えていないはずだ。
「よし・・・」
僕は歩き出し射程範囲内に入る。
向かうは真北のビルだけだ。
バァン
早速撃ってきた。僕は素早くフライパンを実体化させて防ぐ。
カキンッ
弾が弾かれ地面に食い込む。
ふぅよかった。ちゃんと防げた。
バァン、バァン
今度は立て続けに2発。
即座にもう一個フライパンを出して防ぐ。
勇輝から見れば世に奇妙な二刀流のテニスプレイヤーに見えたことだろう。
その後も何度か防いだがとうとう両手のフライパンが粉々に砕ける。
バァン、バァン
きっと勇輝は勝利を確信しただろう。念の為2発撃ってきたのも勇輝らしい。
が、それをまだ閉まっていた〝2つのフライパン〟
で防ぐ。空き家に4つも置いてあってほんとに
ラッキーだった。
事前に圭汰さんに聞いておいた事だけど
勇輝が使っている銃はASIX-338という銃らしい。
連続して撃てる弾数は14発。
最初に圭汰さんを狙ったので1発。
そして僕が防いだのが12発。
これで残りの弾数は1発。
僕は一気に走って、閃光手榴弾が届く範囲まで距離を詰める。
僕は腰に付けていた閃光手榴弾を右手に持ってそれを思いっきり投げた。
綺麗に弧を描いて飛んでいく。
バァン
それを勇輝が撃った。
その瞬間視界が光に包まれる。
後は圭汰さんが狙撃してくれれば・・・
バァン
僕の真後ろから銃声が聞こえた。
圭汰さんの狙撃だ。
僕は視界が回復するのを待った。
数秒して視界が回復する。辺りは静寂に包まれている。
僕はビルに辿り着き階段を登って屋上に向かう。
一応死体の確認をして置かなければいけないからだ。屋上に辿り着くとそこには人が1人倒れていた。近づいて顔を確認する。
勇輝のアバターだ。眠っているように目を閉じている。
そして手には〝空薬莢が2つ〟握られていた。
僕は鉄格子から身を乗り出して圭汰さんがいるであろう方向に向かって思いっきり手を振った。