初陣part2
南の街を圭汰さんと2人で散策した。最近のゲームは本当にリアルだ。アスファルトを踏む音、少しだけ感じる微風。その全てが現実となんら変わりがない。
「止まれ!」
圭汰さんが僕の目の前に手を出して止まるよう指示する。
「プレイヤーの死体がある」
見ると前方100メートル付近に人が倒れていた。
「ゲームで死んでも死体は残るんですね」
「あぁ、ここに死体があるということは人狼が近くにいる可能性が高い」
「近づいて確認しますか?もしかしたら死んだフリかもしれませんし・・・」
ここからでは倒れているプレイヤーの状況も詳しく確認出来ない。
「そうしたいのは山々だが、俺たちをおびき寄せる為に人狼が死体で利用した罠かもしれない」
「なるほど・・・、そういう可能性もあるんですね」
ふと、周りを見回してみる。人狼は既に僕達の近くにいるのだろうか。ここは街といっても少しだけ開けた場所だった。いや、遠くからスナイパーライフルで捕捉している可能性も・・・。僕は〝近くにある1番高い建物〟を見える範囲で探してみた。
すると、500メートル先に7階建てほどのマンションがあった。そしてその屋上から一瞬何かが光った。気づいたら僕は圭汰さんの手を引っ張って近くにあった建物の影まで引っ張った。
「ヒュンッ」
さっきまで圭汰さんがいた場所に銃弾が通過、地面にめり込んだ。
「スナイパーか・・・!」
圭汰さんが立ち上がりながら呟く。
さっきの死体は僕達をおびき寄せる為ではなく、その場に留める為の罠だったのかもしれない。
「すまん、助かったアキ」
「無事で良かったです」
「よく狙撃されることに気づいたな」
「たまたまスナイパーが狙撃しやすそうな建物があると思って見てたら一瞬だけ光ったので気づいたら体が動いてました」
「そうか、助かったのはいいがこのままでは下手に移動は出来ない。俺達を何の躊躇いもなく撃ってきたあたり人狼なのは間違いない。ここで迎え撃つか、スナイパーの射程に入らないように迂回して逃げるか、どっちにする?」
「そうですね・・・」
少し考える。がすぐに決断する。
「迎え撃ちましょう。これは〝ゲーム〟ですから」
折角やってるんだし、逃げて生き延びるよりも戦って死ぬ方が〝おもしろい〟。
「分かった。だが、人狼を倒す手は有るのか?俺達の居場所がバレている。しかも上からの遠距離射撃。こっちが圧倒的に多い不利だ」
確かにその通りだ。だが、実は1つだけ作戦を思いついていた。しかしこれを実行するには必要不可欠なものがいくつかある。
「1つだけ、考えがあります。でもその前に圭汰さんにいくつか聞きたいことがあります。まず、圭汰さんが持ってる武器はなんですか?」
「スナイパーライフルとハンドガン。あとさっき拾った閃光手榴弾だ」
「じゃあ次の質問。圭汰さんは狙撃の腕はどのくらいですか?例えばですが・・・1度確認した敵を目隠しして当てたりすることってできます?」
「相手が動かなくて、かつ走ったりしながらじゃ無ければ可能だが・・・」
なるほど。狙撃の腕はかなり高いらしい。
「じゃあ次です。このゲームの世界ってどのくらいリアルなんですか?例えば今隠れてるこの建物の中に椅子とか机とかがあって、それを盾として使うことってできますかね?」
「このゲームはかなり世界観に力を注いでいる。椅子や机なんかの家具はもちろん、ぬいぐるみや包丁なんかもリアルに再現されている。このフィールドの場合人狼の襲撃を受けた街っていう設定だ。さっきお前が言ったように盾や武器として使うこともできる。だが、それも俺達の武器も同様耐久値というものがある。それがあるゼロになると跡形もなく消える」
「なるほど・・・大体分かりました。それならなんとかなりそうですね・・・」
これだけ知れたら十分作戦を実行できる。あとは
〝アレ〟があるかどうかだ。
「で、何か策が有るのか?」
「はい、今の話を聞いて実行出来そうなのが1つ。でもそれを実行するにはあとどうしても必要不可欠なものがあります。それを踏まえて今から説明します」
僕は考えた作戦を圭汰さんに話した。
「なるほど・・・確かにそれなら勝ち目はあるかもしれない。だが、それには運の要素も絡んでくる。特にアキ、失敗すればお前は確実に死ぬぞ」
確かにこの作戦は僕と圭汰さんの〝技量〟にかかっている。だが、僕達が完全に不利かと言われると実はそうでもないんじゃないかと考えている。
さっきの狙撃の正確さ、罠を使う頭の良さ。その戦術に見覚えがあったからだ。そして僕の勘違いじゃ無ければ僕の親友に1人だけ心当たりがあった。勇輝だ。僕は間違いなく1人目の人狼は勇輝、いやユーキだと確信していた。