初陣 part1
東の森に転送されたアキは南の街を目指して走っていた。街までの距離はまだ2kmほどある。
「さてと・・・どうしようかな・・・」
まだこのゲームを完璧には把握出来ていないため
疑問がある。他のプレイヤーと出くわしたらどうすればいいのか、 会話?撃つ?出くわして早々撃つなんてFPSゲームとしては成り立つが、
人狼ゲームとしては成り立たない気がするが。
そんなことを考えていると前方右側に
人影が見えた。他のプレイヤーだ。
向こうも僕に気づいたようだ。僕は両手を上げて敵意がないことを示す。ここで撃たれたら即ゲームオーバーだが・・・。向こうが近づいてきた。
撃ってくる気配はない。こちらの意図が伝わったようだ。徐々にプレイヤーの姿が露になる。
身長は180後半はあるだろうか。
ツーブロックの髪型、厳つい顔、熊のような体格
迷彩柄の服に右手にはハンドガンを持っていた。
歴戦の兵士を連想される見た目だった。
「お前初心者か?」
「え、あ、はい、そうです・・・」
「やっぱりな、その初期装備の服懐かしいな・・・このゲームにまだ慣れてないなら質問には答えてやれるが、何かあるか?」
見た目とは裏腹に優しそうな人だ。
「えーと・・・このゲームって他のプレイヤーと出会ったらすぐに撃ったりとかはしないんですか?」
「ああ、基本的にはすぐに撃ち合うことはしない。味方を殺したらペナルティーを食らうからな」
「ペナルティーとは具体的にどんなものを?」
「所持コインの没収だな。部屋によるが今回はマイナス3万コインだ。だから何も無しに撃ったりはしない。人狼要素も入ってるから推理も必要だ」
「なるほど」
「他のプレイヤーと出くわした場合は固まって交代して互いに監視し合う。怪しい動きをしたりすれば撃てばいい」
丁寧な説明で色々知らなかったことも分かった。
「僕達はこれからどうすればいいんですか?」
「とりあえず南の街に移動しよう。もし銃声が聞こえたらそこに向かう。味方が人狼と戦ってる可能性が高いからな」
「なるほどなるほど」
「まだ名前を名乗ってなかったな、圭汰だ。よろしく頼む」
「アキです。こちらこそありがとうございます。丁寧に説明までしてもらって」
「困った時はお互い様だ」
そう言って圭汰さんは微笑んだ。
なんて言うか・・・アニキと呼びたい・・・
「互いに監視し合って南の街に行くぞ」
「はい!」
僕達は互いに監視しながら南の街に向かって歩いた。森の中は異常なまでに静か。銃声なんて全く聞こえない。結局他のプレイヤーに会うこともなく南の街に着いた。南の街は緑だった。建物には苔が付いていて、植物のツルが絡まったりと人が手を加えずにそのまま放置した感じだ。
「ここら辺は木箱が結構落ちてるから殴るなり蹴るなり壊しとけ、アイテムが入ってたりするからな。稀にだがレアな銃が入ってることもある」
言われるがままに木箱を壊して見るとアイテムが1つ入っていた。閃光手榴弾と表示された。
もう一個の木箱も壊してみたが空だった。
「そういう時もある」
結局手に入ったのが閃光手榴弾1個、アサルトライフルの弾が20発、スナイパーライフルの弾が一発
それらをアイテムを入れるストレージにしまう。
ストレージにしまうとアイテムは跡形もなく消えた。使いたい時はアイテムコマンドを押す必要がある。
「全部ストレージに入れたか?」
「あ、はい。全部入れました」
「よし、じゃあ移動するぞ周囲を警戒しろ」
「はい!」
そう言ってアキと圭汰は移動し始めた。
2人は気づいていない。自分達が既に1匹の狼の標的にされていることを