雲泥の差
「は?ゲーム?いきなり現れて何言ってんだ?」
勇輝が胡散臭そうにピエロ男に言う。
「まあまあ話くらい聞こうぜ」
成哉が興味津々という感じで諭す。
「で?ゲームってどんなやつ?」
「いやー、君達みたいな腕っ節のある子達にピッタリのゲームだよ」
「君達がヤンキーをボコしてるとこ見て是非とも参加して欲しいと思って声をかけたんだ」
「しかもお金が稼げるんだよ。どう?悪い話じゃないと思うけど」
「いや、余計怪しいんだが・・・」
勇輝が警戒態勢で男を睨む。
「ちょっと相談させてください」
そう僕が言ったらピエロの男は首を縦に振った。
「で、どうしよう。なんか変なことになっちゃったけど・・・」
「絶対やめた方がいい。何されるかわかったもんじゃないぞ」と勇輝が。
「俺は行ってもいいと思うけどなー。いざとなったら3人で追い剥ぎして逃げればいい」と成哉が。
「誘拐とかされたらどうするの?」と僕。
「じゃあついて行く前に勇輝の父さんに連絡しとけば?いざとなったら探してくれるだろ」
ちなみに勇輝のお父さんは警視庁のお偉いさん
「それに最近ヤンキーボコるのも飽きてきてたんだよなー。そろそろ新しいことしたいと思ってたし」と成哉が言った。
「はぁ、わかったよ・・・連絡しとけばいいんだろ・・・」成哉が1度興味を持ったらとまらないのは分かっているので勇輝は折れた。
「で、諒人はどうする?」成哉が聞いてきた。
「まあ、二人が行くなら異論はないよ」
「よし!決まりな!」
話し終わってピエロの男について行くことを伝える。
「いやー、良かった!じゃあついて来てくれ」
そう言ってピエロの男は歩き出す。僕達はその後に続いた。
人気のない路地裏をしばらく歩いていると少し派手な店に着いた。Wolfと書かれた看板が置いてあったがなんの店かは分からない。
ここに入るぞとピエロの男が手招きする。
警戒しつつ中に入ると大量の仮面が置いてあった。どうやら仮面屋?らしい。
奥に入っていくと店主らしき人がレジに座っていた。コチラに気づくと店主がピエロの男に訪ねる。
「合言葉は?」
「狼の衣」
そうピエロの男が言うと店主がよく店に置いてあるベルを鳴らした。すると奥の扉が開きエレベーターが現れた。
「スゲーな」成哉が呟く。
ピエロの男がエレベーターに乗ったので僕達もそれに続いた。エレベーターに乗ると謎にみんな静かになるよね。気まづい。
気づくと目的の階まで着いていた。扉が開く。
するとそこには・・・
「なんだここ・・・」成哉が驚いたとばかりに言う。
「カジノ・・・か?」勇輝が絶句したように呟く。
「そ!ようこそ闇カジノへ」
そう言ってピエロの男が歓迎の姿勢を表す。
「日本にカジノなんてあるはずがない・・・まさか・・・闇カジノ?」僕が疑問を口にすると
「いや、厳密には合法な闇カジノさ」
「どういうこと?」
「アメリカなんかはカジノの利益を政治の予算なんかに回したりするのさ。今赤字続きの日本政府がアメリカの真似事の政策として作ったのが、ここ闇カジノだ。ここは数年後にカジノを作る予定の試運転として秘密裏に運営されてるカジノなのさ。どう?凄いだろ?」えっへんとばかりにピエロの男が言った。
「まさか・・・俺たちにギャンブルをしろと?」
「いや、あくまでゲームをしてもらうだけさ。とりあえずついてきてくれ」
そう言ってピエロの男が歩き出す。警戒度がぐっと上がったがここまで来たら引き返そうにも引き返せない。黙ってついて行くしか無さそうだ。
それにしても広い、地下なのにどこぞのイ○ン並の広さだ。
黙ってついて行くとプレイヤールームと書かれた部屋に入る。そこにはさらにいくつもの部屋があった。
「とりあえず空いてるこの部屋に入るか」
そう言って109と書かれた部屋に入る。僕達も続く。するとそこにはベットとその上に無造作に置かれた謎の機械が4つほど置かれていた。
「さて、君達にやってもらうゲームはVRゲームだよ!」ピエロの男が元気に言った。
「VRって最近流行りの?」勇輝がピエロの男に訪ねる。
「そ!しかもこれは世に出回っていない最新機器のVRゴーグルなのさ!」
「んでもって、君達にはVRFPSゲームをして貰らうよ」
「FPSってあの銃でバンバン撃つあの?」
「そうそう!でもただのFPSじゃないよ!」
「なるほど、ゲームで死んだらリアルで脳が焼かれるのか」 「どこのラノベだよ」
軽く成哉がボケてピエロが突っ込む。
「やってもらうのは人狼型FPSさ」
「人狼ってあの人狼?」
人狼とFPSゲームが全然結びつかない。
「すごく簡単に説明すると君達がそのゴーグルを被って実際にアバターを動かして、人狼ゲームをしつつ敵陣営のプレイヤーを銃で倒すゲームさ。そしてそれをモニターで中継して誰が勝つか客が賭けるんだよ」ざっくり説明されて何となくだが理解する。
「物は試しだ。実際に被ってそこのベットに寝転んでくれ。後でゲームの世界で説明する」
そう言ってピエロはマスクを外した。中々かっこいい顔面偏差値、まあ、どうでもいいが。
「先にあんたが付けてくれよ」
警戒してか勇輝がそんなことを言う。
「OK、いいぜ」
そう言うとピエロはゴーグルを付けてベットに寝転ぶとそれっきり動かなくなった。
「よっしゃ、付けるか~ワクワクする」
「ほんとに大丈夫なのか・・・」
「まあ、ここまで来たら付けるしかないよ」
僕達もゴーグルを付けてベットに寝転ぶ。
ゴーグルを付けるとwelcomeと英語で書かれた文字が浮かびあがり視界が眩しくなった。体が宙に浮いているような感覚になる。そして視界が回復すると僕は街にいた。近未来的な建物が並んでいる。隣に知らない人が二人いた。1人は背の低い中学生ぐらいの人と、もう1人はクールそうな背の高い人。背の高い方の人と目が合うと
「お前・・・諒人か?」
「え?もしかして・・・勇輝?」
「スゲー、マジでリアルに動かせるじゃん」
そう言って背の低い方が飛び跳ねながら言う。
「そっちは・・・成哉?」
「おー、諒人か!中々かっこいいアバターだな、それに比べて俺はゲームでもチビとは・・・」
ふと目の前にあったガラスの扉に反射して自分が映る。そこには髪の毛ツンツン頭のいかにも元気だよって感じのイケメンがいた。
「え?これが僕?」
頬を触って確認する。肌の温かさまで再現されていた。最近のVRの凄さに驚かされる。それにしてもリアルとは雲泥の差があるくらいイケメンのアバターだった。リアルもこんなだったらなー
「よっ、気に入ってくれたかな?自分のアバターは?凄いだろ?」
声のする方を見ると体操のお兄さんみたいな人が立っていた。
「えーと、誰ですか?」ボクが言うと
「多分さっきのピエロの人だろ」と勇輝が言った
「んじゃ早速ゲームの説明をするからこっちに来てくれ」そう促され僕達はゲームの世界を目で肌で感じながらピエロについて行った。