接近
~10分程前~
「作戦は至ってシンプル。西の街にいる6人のプレイヤーに悟られないように4方向から囲んで攻撃する。具体的には2人がプラズマ銃を撃って残りの2人が取りこぼしたやつを殺す、簡単だろ?」
「でも4人同時にプラズマ銃を撃った方が確実なんじゃないの?」
僕はシヴァに疑問をぶつける。
「いや、プラズマ銃は貴重で強力な武器だから
〝たかが6人程度〟に4発も使えないな。2発で充分だろ。それに・・・」
「それに?」
「いや、何でもない。とりあえず他の2人もこの作戦でいいか?」
シヴァがHarthと圭汰さんに同意を求める。
「おん、それでいいと思うぜ」
「構わない」
「よし、じゃあ急いで西の街に向かおう。細かいことも向かいながら話す」
僕達は頷き西の街を目指し走る。
「で、誰がプラズマ銃を撃つかだが・・・」
シヴァが走りながら僕らに話しかける。
シヴァの横にHarth、後ろに僕と圭汰さんといった並びで走っていた。
「皆のメイン武器を知りたいんだが」
「俺はM14DMR、スナイパーライフルだ」
「俺も圭汰と同じくスナイパーライフルM110だ」
圭汰さんもHarthもスナイパーライフル。
2人とも遠距離専門らしい。
「僕はK2。アサルトライフルだよ」
実はさっきゲームにログインした直後に武器屋によって武器を買っていたのだ。前の武器よりは強力なはずだ。
「オッケー、じゃあプラズマ銃は圭汰とHarthに撃ってもらおう。俺とアキで残りを殺る」
「「「了解」」」
そうこうしているうちに西の街に着いた。
ここで僕達は止まる。
「よし、作戦開始だ。俺はここに残る。アキは俺の真反対の方向、圭汰は俺からみて右、Harthは左方向に移動してくれ。3人とも移動出来たら連絡な」
僕と圭汰さんとHarthは急ぎ足で西の街を囲むように走る。
3分程して指定された位置に着き、皆に報告した。
『アキ、到着』
『圭汰、射程距離に到着』
『同じく射程距離に到着』
人狼同士は互いにどこにいるのかマップに表示されている。マップで見ると僕が西の街の南、圭汰さんが西、Harthが東、シヴァが北にいて菱形のような形で敵がいる広場を包囲していた。
『レーダーで見ても6人は動いていない。西の街に他のプレイヤーもなし。いつでも撃てる』
レーダーを使っている圭汰さんからの報告。
『よし、じゃあ圭汰早速撃ってくれ。Harthは圭汰が撃った音がしたらすぐに撃ってくれ。少し時間差を作ってくれ。同時に撃って避けられたらうぜーからな』
『了解』
キィィィィィン
キィィィィィン
2つの機械音のような音が聞こえる。
「始まった」
バチバチバチィィィ
バチバチバチィィィ
今度は雷が落ちたような音が聞こえ、広場方面が光に包まれているのがこっちから分かる。
『4人死亡。1人は北、もう1人は南に逃げた』
どうやら僕の方に1人逃げてきたようだ。
待っていると1人のプレイヤーがこちらに向かって走ってきた。距離は約150メートルくらい。相当慌てているのか僕には気づいていない。
僕は銃を構えて狙いを付ける。
「た、助けてくれ、」
そのプレイヤーが僕に言った。どうやら僕が味方だと思ったらしい。
だが僕が与えたのは無慈悲な銃弾だった。
「作戦成功だな!」
シヴァが最後の敵を倒して満足そうに言う。僕とシヴァは広場に集まっていた。
圭汰さんとHarthも合流する。
「それが噂に聞くゾディアックシリーズか」
圭汰さんがシヴァが持っていた銃を見て言った。
「アクベンスだ。かっこいいっしょ?」
「あぁ」
「流石だな」
いつもシヴァと一緒にいるであろうHarthもアクベンスの力を褒め称える。
そこで僕はふとした疑問を聞いてみた。
「ゾディアックシリーズって12星座をモチーフにしているんだよね?」
「そうだけど?」
「そのアクベンスってどの星座をモチーフにしてるの?」
「〝蟹座〟だ。因みにアクベンスっていうのは蟹座で1番明るい星、一等星の名前だ。他のゾディアックシリーズにもきっとその星座の一等星の名前が付いてるんだろ」
「なるほどね、それって──」
「話をしているところで悪いが」
圭汰さんがレーダーを見てどこか驚いた様子で僕達に話しかける。
「んん?」
「東の街からものすごいスピードでこっちに向かってきてるプレイヤーがいるぞ」
そう言って圭汰さんが僕達にマップを見せる。
見ると東の街にいる緑の点が〝結構早い〟スピードでこっちに向かってきている。
「「「アセナだな」」」
僕以外の3人がハモって言った。
「まぁ、あんだけ派手にプラズマ銃撃ったら音もでけーし光る範囲も広いから位置がバレるのも無理ないな」
「いやいや、これスピードがおかしくない?」
僕はそう突っ込まずにはいられなかった。
「だってあいつめちゃくちゃ速いもん。噂だが、あいつのゾディアックシリーズの効果は素早さ+200って聞いたぜ。あいつも結構やり込んでるし元の速さが200と仮定するなら足して400って所か」
「よ、よんひゃく!?」
Harthの会話を聞いてめちゃくちゃ驚いた。僕でも素早さは70(前回のゲームで上がった)なのに400って・・・
「それがアセナが〝最強〟って言われている所以だ。すぐに近づかれてサブマシンガンで蜂の巣にされる」
「で、アセナに気づかれたのは想定外だがどうするんだ?シヴァ」
「想定外?〝想定内〟だが?」
「なに?」
「アセナがこっちに気づくのも想定しての作戦だったんだよ。プラズマ銃を4発じゃなくて2発にしたのもそのためだ。慌てる必要はこれっぽっちもねーし。むしろラッキーだね。ここでアセナを倒せば俺達も最強の仲間入りよ」
「で、どうやってあのアセナを倒すんだよ」
「まぁ任せておけ」
自信満々なシヴァと少し焦った様子の僕達3人。
僕はゲームを初めてまだ1週間程しか経っていないのに早くもこのゲームで1番強いプレイヤーと戦うことになった。