団欒
部屋の真ん中に表示されている数字が0になり続々とプレイヤー達がフィールドに転送されていく。転送される時に視界が眩しくなるのにはもう慣れたものだ。
視界が回復すると見えたのは街。前回は森からのスタートだったが今回は街からのスタートだ。
フィールド名は『侵略された王都』。ちなみに前回のフィールド名は『森付近の街』。フィールドは前回同様東西南北で街が区切られているがど真ん中に円形になった場所がありそこに王都と記されてある。『侵略された』と書き表されているあたり人狼に襲撃された街という設定なのだろう。
街の所々に獣っぽい鉤爪や破壊された跡がある。
転送されて開始1分間は役職確認時間となっていて他プレイヤーを攻撃することが出来ない。1分過ぎてからがゲームスタートだ。
前回の制限時間は1時間だったが人数が多い為今回の制限時間は1時間30分。
僕は自分の役職を確認する。
「ほほう・・・」
役職確認した僕はそう呟いた。
しばらくしてゲームスタート!と文字が表示される。現在いる場所は東の街。僕は〝南の街〟を目指して走る。
3分ほど走って南の街に辿り着く。
僕は古びているが結構大きめの赤レンガの家に入る。そこには〝3人のプレイヤー〟がいた。
僕に気づくなりそれぞれが
「お、来たな」
「これで全員だな」
「今回は同じ陣営だな」
と言う。
1人目がSchwein、
2人目がHarth、
3人目が圭汰さん。
「これが僕達〝人狼陣営〟ですか」
僕は前回と同じ人狼の役職を引いていた。ゲーム開始直後に南の街に集合とメッセージが送られてきたのだ。
なにより皆の初期位置を見て驚いた。圭汰さんとHarthが南の街、Schweinが西の街と南の街の境界線上スタートでかなり偏っていたのだ。
「こんなに偏ってるパターンなんて初めてだ。おかげで前半から全員集まることが出来た。これからどうするか4人で話し合おう」
僕達4人はそれぞれ近づき合って小さめの丸を作った。
「とりあえず名前名乗っとく?」
Schweinが僕達に問いかける。
「そうだな、圭汰だ。よろしく」
「Harthだ。よろ」
「俺はSchwein。呼びにくかったら
シヴァって呼んでくれ、よろしく~」
「アキです。よろしくお願いします」
それぞれが軽く自己紹介する。
「アキ、敬語は使わなくていいぜ。固くならずに仲良くしようぜ」
シヴァ(親しみを込めて)が僕の肩を軽く叩いてそう言ってくれた。皆優しそうな人で良かった~。
「現状こうして固まることが出来たのはいいけど、勝つにはアセナを倒さなくちゃいけないぞ」
「だよな~、問題はアセナだよな~。あいつめちゃくちゃ強いもん」
Harthとシヴァはさっき注目を集めていたアセナというプレイヤーを警戒しているようだ。
「ゾディアックシリーズ手に入れてから誰もアセナを倒したことないんだぜ?」
「いいじゃん、敵は強い方が燃えるってもんよ」
「強すぎて周りがアセナっていう2つ名で呼び始めてから本人も名前アセナに変えたしな」
「アセナって2つ名だったの?」
僕は2人の会話に参加する。圭汰さんは今のところ黙って聞いてる。
「そうだ。因みに〝アセナ〟っていうのはテュルク神話っていう神話に出てくる雌狼のことだ。どっかのヒロインの名前からパクったわけでは断じてないぞ。reader(読者)諸君」
「えーと・・・Harth?誰と喋ってるの?」
Harthが明後日の方向に向かって喋っているので思わず突っ込んでしまった。
「気にするな。こっちの話だ。それよりこれからどうするか相談しよう」
「そうだな」
今まで黙っていた圭汰さんが口を開く。
「まずはどこに敵がいるか把握しないとな。悪いが圭汰はレーダー使ってくれないか?」
レーダーとは人狼の特殊能力の1つで10分間村人側のプレイヤーがどこにいるのかを把握することが出来る特殊能力だ。
「あぁ、分かった」
圭汰さんが操作を初め、僕らの目の前にフィールドの地図が現れる。フィールドの地図そのものは全てのプレイヤーが見ることが出来るがこの地図には緑と赤の点が表示されている。
南の街に4つの赤の点が固まっているのが僕達。
どうやら僕達が今居る南の街には他のプレイヤーはいないみたいだ。
「ふむふむ、なるほどね~」
「方針は決まったな」
「そうだな、まずは西の街にいる奴らから襲撃した方が良さそうだな」
「そうだね」
各々話し合って西の街に行くことに決める。
何故なら西の街には6つの緑の点が固まっていたからだ。
「んじゃ、いっちょ暴れますか~」
「闇雲に突撃しても勝てないぞ」
今にもダッシュで向かいそうなシヴァを圭汰さんが止める。
「分かってるって~。いい作戦を思いついたから安心しろ」
「本当か?」
Harthが胡散臭そうに訊ねる。
「作戦は──」
シヴァはイタズラを考えた子供のような顔で作戦を語り始めた。