初陣part7
はい、どうもどうも成哉ことNaruです!
役職で人狼を引いた俺は口笛を吹きながらフィールドを駆け巡ってたんだが、途中で他のプレイヤーに出くわしたわけよ。
俺コミュ力は割と高いから色々このゲームについて聞いたんだな~。
基本的には複数行動とか味方殺したらペナルティとか役職の能力とかその他もろもろ。
そしたらそいつ「俺予言者なんよ」てサラッと宣言したのよ。
だからとりあえず顔面にサブマシンガン撃ちまくったらそいつあっさりやられちゃった。
てへぺろ。
フィールドの北側からスタートしたからとりあえず味方と合流ってことで同じ人狼のユーキがいる南側に向かった。〝もう1人の味方〟もユーキと同じ南側付近にいるらしいし。
あ、ちなみに人狼同士はチャットで自由に会話出来るよ。
向かってる途中でプレイヤー数名と遭遇したけど
めんどくさいから殲滅した。
まぁ、さすがに俺も初心者だからHP半分くらい持ってかれちゃったけどね。
倒した死体の山に登ってかっこつけてたら
『ユーキ死亡』って視界右上に表示された。
そこで俺は仇討ちってわけで今からそいつを殺しに行くわけなんだが・・・
ここで俺は人狼の特殊能力〝レーダー〟を使う。
これは数分間村人側のプレイヤーがどこにいるのかが分かるっていう能力。結構便利。
フィールドマップの南の街そこに赤い✕が1つ。
これがユーキが死んだ場所。
そしてそのすぐ近くに村人側のプレイヤーを示す緑の点。多分こいつに殺られたんだな。きっと。
南の街に着いた俺はレーダーを確認。
レーダー通りなら1キロほど離れたでかいビルにいるはずだ。
そして俺はまたまた特殊能力を使う。
名前が長い上に漢字ばっかりだから説明すんのめんどくさい。
とりあえず俺は見つからないようにゆっくり近づいて射程範囲内に入ったから〝その銃〟をビルに向かって撃った。
第二の人狼の攻撃をなんとか避けられたものの
圭汰さんは両足損失という事態に。
きっと人狼はこのビルに登って来るはず。
一旦避難しないと。
「とりあえず引っ張りますね」
「あぁ、頼む」
僕は圭汰さんの両腕を掴んでズルズル引っ張る。
「さっきの雷みたいなのってなんなんですか?」
「〝遠距離式広範囲プラズマ銃〟。人狼の特殊能力の1つだ。半径20メートル圏内のプレイヤーに大ダメージを与える。といっても大概一撃で死んでしまうけどな」
「うへー、なんつー武器」
とりあえずこの階(7階)の部屋に隠れるしかない。
どの部屋もドアは開けることが出来たから1番奥の部屋に入る。1LDKの部屋だ。結構広い。
「おい、あれ・・・」
圭汰さんが示す方を見るとそこには死体が転がっていた。恐らく勇輝が殺ったんだろう。
「最初に倒した人狼の仕業ですかね」
「だろうな、奴は2人も殺したってことか」
僕は圭汰さんを壁にもたれ掛からせる。
「これからどうします?」
「どうするも何も、このままじゃ見つかるのは時間の問題だ。レーダーを使ってるならここもすぐに見つかるだろうな」
「そう・・・ですよね・・・」
「今からでも遅くない俺を置いて逃げろ。ゲーム終了まで逃げ切れれば俺達の勝ちだ」
確かに両足のない圭汰さんを置いていくのが最善策・・・
なのかもしれない。けど、このまま下に降りたら人狼に遭遇する確率が極めて高い。逃げるのは不可能だ。
「置き去りになんかしませんよ。ここで迎え撃ちましょう」
僕は圭汰さんの横に座る。
「だが・・・」
「死んだらその時ですよ。これは〝ゲーム〟ですし。楽しんだもん勝ちですよ!それに──」
「もーーーーーーーーーいーーーーーかーーーーーいーーーーー♪」
僕達の会話をバカでかい声が遮る。
「ほらほら~この階にいるんだろ~?出ておいでよ~~♪んんん?」
ドガドガドガと銃声がやかましく鳴り響く。
「どこだどこだ~?俺の7キル目の獲物は~?」
あの呑気で楽しそうな声。アバターでも分かる。成哉だ。
「さて・・・どうします?」
僕は圭汰さんに問いかけるが何故か反応しない。
「圭汰さん・・・?」
圭汰さんは考える像みたいに右手で顎を触りながら何か考え事をしていた。
そして僕の方を見る。まるで熊にでも遭遇したかのような顔をしていた。
「どうかしましたか?」
やられた。両足がない今俺に人狼を迎え撃つだけの力はない。加えて相方は頭がキレるとはいえ初心者。絶望的な状況だ。第二の人狼の声がする。
もうこの階まで来てしまったようだ。逃げ切りの策も実行出来ない。袋の鼠だ。
「どこだどこだ~?俺の7キル目の獲物は~?」
第二の人狼がこちらに聞こえる声で叫ぶ。
俺はふと違和感を覚えた。何かがおかしい。
だが、それが何か分からない。
何かが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
待てよ・・・第二の人狼は7キル目と言っていた。
つまり、6人殺したということ。
そして俺が最初に殺した人狼は2人殺していた。
そうなると・・・
2人(人狼側)+8人(死亡者)+2人(俺とアキ)=12
そして・・・今回のゲームのプレイヤーの総数は・・・
〝12人〟
数が合わない。人狼は3人いるはず。
人狼は最低でも2人は殺している。最初の罠に使われた死体と今この部屋にある死体。
そして第二の人狼が嘘を言っているのでなければ
人狼側は計8人殺したということ。やはり数が合わない。・・・まさか・・・・・・
俺は隣を座るアキを見る。
「どうかしましたか?」
アキはキョトンとし顔で俺を見ている。
まさか・・・
「お前・・・──」
「あー・・・もしかして、気づいちゃいました?」
アキは俺の心を見透かしたように呟く。
カチャッ
俺の頭に銃が突きつけられる。
「人狼側(僕達)の勝ちですよ」
バンッバンッ
俺の意識はそこで途切れた。
『人狼側の勝利です!!』
人狼側の勝利を伝える文字が浮かび上がる。
「おわった?」
成哉がドアを開けて覗き込む。
「うん、終わったよ」
「俺達の勝ちだな」
「そうだね」
僕と成哉は勝利のハイタッチをする。
~ゲーム開始直後~
「人狼・・・か」
『よう』
『おおー、俺達3人じゃん!なんという偶然』
視界にポンポンと味方からのメッセージが表示される。僕と勇輝と成哉が人狼だった。
僕はまずルールを確認した。少し気になったことがあったからだ。ルールの説明には村人が味方を殺すとペナルティを受けると書いてあった。
では〝人狼同士で殺し合うとどうなるのか〟
そこにはこう書かれていた。
〝人狼が味方を殺した場合、殺された側が運営に訴えれば殺した側はペナルティを受ける〟
つまりこれは〝互いに同意していれば殺してもいい〟ということだ。
そこで僕は2人に作戦をメッセージで送った。
作戦といっても内容は至ってシンプル。
もし1人以上敵を殺したらわざと僕に殺されて欲しいと。まあ、実際は直接殺さずに済んだけど。
村人も人狼も敵を殺すとキルボーナスでコインが貰える(勝った場合のみ)。
さすがに誰も殺してないのに味方を殺すわけにはいかない。そのプレイヤーはボーナスが貰えないからね。
本来の人狼ゲームにもある戦法だ。
人狼がわざと味方を陥れたり殺されるように誘導する行為。これを俗に〝身内切り〟というのだが、今回の作戦はまさにそれだ。
2人は僕の作戦に乗ってくれた。
だから僕はわざと誘導して圭汰さんに勇輝を
〝殺させた〟。
勇輝の死体の手に握られていた2つの空薬莢。
あれは2人殺したというメッセージ。
成哉が7キル目=6人殺したというのも伝えてくれた。これでもう残っているのは僕と圭汰さんと成哉だけ。僕は勝利を確信した。袋の鼠だ。
最後の最後に圭汰さんは気づいたみたいだけど
もう遅い。僕は圭汰さんに銃を突き、撃った。