3話
なんとなく長く寝た気がした。
それはそうだろう。この部屋に目覚まし時計は無いからだ。
時計はそもそも無い。スマホ以外は。
俺がいた日本と同じことは多いが、こういったところは少なからずあるようだ。
スマホを起動して時間を確認する。どうやら日本時間とここの時間は変わらないらしい。
午前9時だ。
快適のように見えるこの部屋だが、テレビも無ければラジオもない。
娯楽のようなものが少ない世界なのかな。
おれはそう思った。
ふとスマホに強制インストールされていたアプリを思い出した。
起動すると、俺のステータスが表示されている。
そして昨日と同様にスマホの中のナビゲーターのような奴に聞いてみた。
「この世界ではどうやってお金を得るんだ?」
答えが一瞬で返ってくる。
速いな・・・。
現実世界だとキモがられることあるぞこれ。
機械だからいいけどさ。
『ギルドに行き、クエストをする、もしくは職場でのバイトや起業だな』
まぁ、俺が知っている異世界ものもこんな感じだったっけ?
まだお金には余裕があるが、ずっと宿暮らしはきキツイかもしれない。
「やるべきかな・・・」
そうして部屋を出た。
外は晴れている。暑すぎず寒すぎず、日本の夏とは違い過ごしやすい気候だ。
まぁ、個人的には雨が好きなんだが。
そんな事はどうでもいいか。
外にはもう人が沢山いる。
どうやらシステムは日本と同じで、平日だから働く人が多いようだ。
俺は高校生だったから、こんな時間には歩いていないから不思議な感覚がした。
「そうだ・・ギルドか・・・」
ギルドに行こうと思っていたんだ。
しかし、まだこの村の地理を覚えていない。
「聞くしかないか・・・」
俺は人に話しかけるのが苦手なんだが・・・。
やるしかないな。
「あっ、あのすいません、ちょっと道を教えてもらってもいいですか?」
ちょっとつまずいたが言えた。
見た目は普通の大人の男性に聞いた。
「ギルドは村の中心にあるよ。時計台の近くだね」
優しく答えてくれた。
「ありがとうございます! 時計台の近くですね」
村のシンボルであろう時計台を目指して歩いた。
村は中規模だろうと思っていたが、建物の中にある施設は意外にも多かった。
俺が泊まっているような宿屋や、鍛冶屋や雑貨屋など様々だ。
鍛冶屋があるという事は刃物などが作られている。そして、武器屋のような店もあることから俺がこの世界に来た時に襲われた狼よりも凶暴なモンスターなどがいるかもしれないな。
歩くこと数分。目的地に到着した。
ギルドの目の前には広場があり、賑わっていた。
仕事はどうしたのだろうか。まぁいい。
ギルドにある掲示板を見ると、そこには沢山の張り紙があった。
討伐系クエスト、依頼系クエスト、育成系クエストなどとジャンルは意外とあるようだ。
簡単そうなやつは無いだろうか?
そう思っていると、男性に声をかけられた。
「あっ、あのすいません。ギルドってここですか?」
俺と同じような人がいた。
一応答えておく。
「そうですね。看板にも書いてますよ」
納得していたようだ。
お礼を言おうとしていると思ったが、予想外の言葉が出てきた。
「久しぶりだな。ちょっと話そうぜ」
どこかで見たことのあるこの人を全力で思い出そうとした。
「あっ、お前は確か・・・」