1話
ゴンっと痛々しい音がした。
目を開けるとそこには、見たことのない世界が広がっていた。
「ここ・・・どこだ?」
意識がはっきりしない中周りを見渡した。
夢でも見ているのかな。ためしに目をこする。
景色は変わらずに広がっている。
何度も繰り返しこするが変わらない。
だんだんと意識がはっきりし、冷静になって考えてみた。
出た結論はこうだ。
「つまり・・あれだ。異世界だ。」
何度も夢見た異世界転移をしてしまった。
でもあまり嬉しくないのは何故だろう。
格好も現実世界の私服のままだ。
「ん!だとしたら・・」
あってくれと願いながらポケットをあさった。
あった。やった。
ぁぁなんだか泣けてきた。
そう、スマホがあったのだ!
俺的に現代っ子にはなくてはならないものだ。
しばしその感動でその場から離れなかった。てか、離れられなかった。
気づくとスマホの電源が入っていた。
あれ、おっかしいなぁ。電源入れたっけ?
一応スワイプしてみる。
表示されたのは、見慣れたホーム画面だ。
その瞬間までは。
次の瞬間、スマホが何かを強制インストールし始めた。
きっ、きかない。
スマホが言うこと聞かない。
とりあえずたまたまスマホと一緒にあったバッテリーにつなぎインストール完了を待った。
ーーー
あれからもう三日か・・・
「って三日!?」
気づかなかった。
ゲームやアニメを観るから徹夜には慣れたけど・・・まさかこんなにかかる?
そしてそれに気づかない俺!
大丈夫か?
スマホには「インストール完了」という文字が並んでいる。
とりあえずアプリを起動する。
やけに動作が遅い。
《Welcome to D F O》
そう表示された。
D F Oって《Different world online》の略しなのか?
適当に区切ったなぁ。
別の表示に切り替わる。
【君の現実世界の体はどうなっているかわかるか?】
ん?
その言葉にすぐ理解できなかった。
そうだ。ここは日本じゃない異世界だった。
【わからないよ】
そう打ち込む。
【だろうな。君に教えてあげるよ君のことを】
教えて欲しかったことがこんなに早く聞けるなんて。
【君の体は・・現実世界の時間で7月9日午後11時03分以降
体と意識そして、存在ごとこちらに転移した。】
嘘だろ・・・
俺の存在が現実世界から消えた・・だと・・
信じられなかった。
俺は現実世界では生まれたことになってないのか?と
書いてみた。
答えはすぐに帰ってきた。
【Yes】
俺は完全に存在が消えたのだ。
【そう悲しむな。あの世界のことより自分の事を考えろ】
は? そう思い後ろを見ると、3匹の狼に狙われていた。
「あっヤベっ」
俺はすぐに明るい方へ向かって走り出した。