1打席目
優と孝がキャッチボールを終えて、話しながらベンチへ戻る。そして、優は、スポーツドリンクを飲んでいる。孝はスコアブックをチェックしていて、咲はボールを磨いている。
いざ、明日の初陣へ!!
「咲ちゃん、今日の優は何点?」
「うーん、70点かな。相変わらずのスロースターターだから、明日の試合の課題は初回かな。」
「オッケー。優、今日はもう走ってダウンな。」
「あいよ。咲、スポドリ、サンキュー。」
優は背を向けて、咲に手を振りお礼を言い、走っていく。
孝はキャッチャー防具を着け、ノックに向かう。孝が声を出し、ノックを打つ。バットの金属音がグランドに響き渡り、選手たちの声も響く。選手たちが必死に一球一球、追う。その外側を走る優。
「2人とも頑張れ」
咲は、2人の背中を見て微笑む。
そして、練習を終え、夕刻。
「咲、帰るぞ。」
「あ、うん、孝は?」
「あいつは、監督に報告しに行くって言ってたから先に帰っていいって。」
咲は荷物を取り、部室を出る。入り口に優が待っていて、後輩たちが挨拶し、寄り道をする者もいれば、それぞれの家へ帰宅する。優が手を出し、咲は荷物を優に預け、歩き出す。
2人は家が近所であり、幼少からの幼馴染である。優と咲には、両親がおらず、互いに親戚の家に住んでいる。昔から一緒にいたことにより、互いによく知っている。
「そういえば、今日のキャッチボールで投げてたのスライダー?」
「お、よく気づいたな。明日の試合で試す予定」
「優、良くも悪くもストレートがその球を活かすからね。期待はしてないけど、期待してるね。」
「期待してないのに期待してるってどういうことだよ。」
2人は歩きながら野球の話や世間話をし、互いの家に着く。
「んじゃ、また明日。」
「じゃあね、優。明日の試合、頑張ってね。」
互いに手を振って家に入る。
咲は着替えて、ベッドに座る。
「優の球、相変わらず綺麗だったな~。成長した優が甲子園で抑えているところ見たいな~。優…」
微笑みながら頬赤らめて、横になり叫びながらモジモジする咲。
翌日…
両チーム、試合の準備を始めている。
孝と優は、ブルペンで投球練習を行っている。
「優、あと3球な!」
優は、ストレートを3球、孝の構えたミットを投げ込む。そして、準備を終え、両チームは整列し、挨拶をして試合が始まる。
優は、ネクストでバットを振って準備している
「相変わらず、ジャンケン弱いな~。先攻率高けぇな。」
「お前は、いつも先攻だろうと後攻だろうと関係ないだろ。とりあえず、打てよ。」
「うい。咲もスタンドで見てるから、打たないと怒られるだろうし。」
場面はワンアウト。ランナー2塁。3番平野優くんとウグイス嬢のアナウンスが流れる。
メガホンを片手に声を出している咲
「優、打てー、孝に回せよ!!」
「あいつ、あの声量ならメガホンいらねーだろ。」
打席に入り、構える優。
さてさて、咲情報だと、相手ピッチャーはコントロールは良いけど、速球と変化球は普通か。
まっすぐに絞るか。
初球、打ち上げる優。
やばっ、スタンドでものすごく睨んでいる奴がいる。
「これは帰ったら素振りだな」
ネクストで呟く孝。
*ネクスト:ネクストバッターズサークル
最近は雨でジトジトしてますね。もうすぐ、高校野球が始まるので今年のドラマが待っていて楽しみです。