課長の記録簿1 回収対象との接触
初投稿になります、よろしくお願いします。
拙い内容では有りますが、よければお時間つぶしにでも読んでやってくださいませ。
1.カスミ・課長ペアの回収対象
薄暗い裏路地を、スーツ姿の男女がのんびりと歩いていた。
周囲に街灯はなく、明らかに場違いな雰囲気を漂わせている。
「この先でいいんだよねぇ、カスミちゃん」
ヨレヨレのスーツを着た、ロングヘアをオールバックにして後ろで束ねた中年の男が、隣でタブレット端末を操作するスーツ姿の女性へと声をかける。
「はい、課長。もうまもなく対象と接触できるはずです」
おかっぱヘアの片耳にかかる髪をかきあげ、端末に表示される地図を見ながら、ヒールをコツコツと鳴らして並んで歩く。
「そうかい?だいぶ物騒なところに居るんだねぇ、彼」
漂ってくる死臭、微かに血の匂いが混じりだす中を、のんきな口調で返す、課長と呼ばれた男。
ポケットから雷模様の描かれた棒付きキャンディーを取り出し、包み紙を外すと口へと運んで咥える。
「課長は回収対象の情報を確認されましたか?」
「いんや?ボクには必要ないと思ってねぇ。特に君が警告を発しないかぎりは、大丈夫だろう」
「対象のデータには、課長の天敵となるものの記録はありませんが、一応備えておいたほうが・・・」
「それは警告かい?」
「いえ、一応の親切心からです」
「やーさしぃねぇ〜。おじさん、惚れちゃうゾ?」
「遠慮させていただきます。知りうる限りの通算274番目の妻の座には収まりたくはありませんので」
「冗談だって〜。でも、その気になったらいつでも言ってね、席は開けておくよ?」
ニコニコと微笑むが、そっけない態度で返される。
「”ファルギーセ”からの情報では、あと1ブロック先を右に曲がったところに彼は居るようです」
暗い夜道、端末の明かりだけが頼りのような状況で、怖がらずに歩くカスミをかばうようにして歩く。
段々と、肌で感じるほどにわかる殺気を受けて、思わず体の一部が真体を現しかける。
歩調は変わらず、まっすぐ進んで右へと曲がろうとしたところで目の前を何かが掠めた。
「っとと、危ない危ない」
間一髪、目の前を掠めたナイフを掴み、飛んできた元の方向へと投げ返すと、カスミちゃんの方へ向き直る。
「カスミちゃんはそこで控えてて。ボクひとりでまずは説得を試みるよ」
「言われなくともお願いします。私は頭脳労働要員なので」
言うやいなや、肩から下げていたショルダーバッグから安全メットを取り出してかぶると、しゃがんで蹲る。
彼女なりの防御の姿勢だそうだ。
角を曲がった先に広がっていたのは、数多の斬殺死体が転がる中、鋭い眼光でこちらを睨んで佇む一人の少年がいた。
「お楽しみの最中・・・ではなく、今しがた終わったところかな?」
向けられる殺気が増すが、意に介さずに口を開いて問いかける。
「”ここ”に来て何年になる?」
「わカらナい」
死体の山の上に立つ男の声は少年のようだ。
「そうか。”ここ”に来て、何をしたかった?」
「英雄とヨばれル”存在”ニ、なりタかっタ」
「なるほどね〜」
対話が続いている。良い兆候だ。
「じゃあ、この惨状についてはどう思う?」
「・・・・・・・・・」
返事はない。
代わりに一瞬、その姿が消え、一瞬で間合いを詰められた。
「ぐっ!」
喉元にひんやりとする感触と鈍い衝撃が走る。
だが、その直後にボキン!と音がして、折れた短剣の中程から先が地面に転がる。
「ひゅ〜・・・・危ない危ない」
衝撃の走った喉元を撫で、先程からの殺気に当てられて表した真体の一部、龍鱗がしっかりと剥げ落ちずにあることを確認する。
「あ、ボクに物理攻撃は効かないよ?全身、ドラゴンスケイル・・・だっけ?まあ鱗があるもんでさ、生半可な剣なら、ボクに触れただけですぐに折れるし」
喉に一撃をくれた回収対象の少年は、信じられないといった様子で目を見開いて驚いている。
こちらもびっくりしたが、ゆうに6メートルはある距離を、ほぼ無音かつ前触れ無く詰めたうえでの一撃を放ってきた事。
加えてその後、なにもなかったように元立っていた場所へと戻っているのだから、身体能力としては常人の域を超えているようだ。
「ぐ・・・ウウウウウウウウああああ・・・・・」
「大丈夫かい?頭でも痛いのかい?」
僅かに一撃だが、喰らってみて思ったことは『大したことない』だった。
だから、彼が頭を抱えてうめきだした時、つい心配してしまったのだが、近寄ろうとした瞬間、その姿がいきなり消えたのである。
「あ、逃げた」
「課長〜、終わりましたか?って・・・・・うっぷ」
「あ、来ないほうが良いって・・・おそかったか」
目の前に広がる光景と、血の匂いに当てられて、盛大にカスミちゃんが口から虹色の液体を吐き戻していた。
☆ ☆ ☆
ーーーー1時間前。
城を中心として、円形に形成されている町並み。
その外周は塀で囲まれ、門のところから伸びる街道と、その両脇に広がる畑。
遠くに見える山々、のどかな風景。そのはるか上空を、宵闇にまぎれて一匹の巨大な竜が悠々と飛んでいた。
『あれが対象の居る王都か。夜の上空とはいえ、寒くないかい?カスミちゃん』
自らの頭上に跨がる、ゴーグル・パンツスーツ・ハイヒール姿のおかっぱ女性にテレパシーで話しかける。
「いえ、別に。それより課長、そろそろ着陸して变化をお願いします」
『わかってるよー。あまり離れすぎてもあの城壁をまで歩くのも嫌だし、徐々に体を縮めながら下りるとしますかねー』
課長と呼ばれた竜は、ゆっくりと高度を下げつつ、同時に成人女性を載せていても問題ないサイズまでゆっくりと縮みながら飛行を続ける。
やがて少し離れの森のなかへと滑りこむように降下し、程なくしてヨレヨレのスーツを着たロングヘアをオールバックに束ねた中年のオジサンへと、竜がその姿を変える。
カスミと呼ばれた女性はというと、その首に肩車されたままだ。
「カスミちゃーん・・・降りてくれないかね?」
「そう思うのなら、屈んでください」
声色一つ変えることなくゴーグルを外すと、肩から下げていたやや大きめの革のショルダーバッグのファスナーを開け、ゴーグルをしまう。
「やれやれ、真体を現して空をとべるのは良いんだが、部下を載せなきゃならんのはどうも・・・ね。よっこいせっと」
腰をかがめて肩車から下ろすと、部下のカスミはショルダーバッグからタブレット端末を取り出した。
体を起こし、「ちょっとは上司を労ってくれよなぁー」と愚痴るが、気にも留めない。
スーツのポケットに手を突っ込むと、棒付きキャンディーを1本取り出して口へと運ぶ。
「かぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!効く!」
最初の一口、その刺激的な辛さにキャンディを口からだし、比喩では無しに口から小さな炎を吐く。
「カスミちゃんもどうだい?1本」
「激辛キャンディは遠慮しておきます」
そう言うと、スタスタと先に歩き始めた。
「つれないねぇ・・・」
肩をすくめ、その後を追う。
向かう先はこの世界”ファルギーセ”の数ある国の中でも大国の一つ、ジャミエの王都ミソトウフだ。
〜・〜・〜・〜・〜
先ほど着陸した森から大して歩いてはいないが、すぐに王都入り口へとたどり着く。
その間に先程の激辛キャンディは、うっかり噛み砕いて食べ終わってしまった。
「やっぱりというか、こういう世界の王都と言うのは検問がしっかりしてるねぇ、感心感心」
「感心していないで、侵入できる場所を探してください、課長」
そっけなく返すカスミもショルダーバッグから暗視スコープを取り出すと、装着して周囲を見回す。
王都の門の外、衛兵詰所と思しき箇所に、数名の兵士が出入りしては門の前を規則正しく動く。
不審者の侵入を防ぐためのものらしい。
「言われなくともわかっているよ」
左目をギュッと瞑ると、再びカッ!と見開く。
それまで只の人間と変わらぬ容姿だったのが、左目のみ万里万象を見通す『竜眼』へと変わる。
ゆっくりと城壁をぐるりと見渡すが、抜け穴らしい穴がない。
城壁の上を見るが、監視しているような人影も見当たらない。どうやら見張りは門の前だけのようだ。
千里眼対象を地下へと向けると地下通路はあるようだが、その伸びている先はというと、かなり遠回りの上に、現在地の向こう側、反対へと伸びていた。
「だーめだね、これ。地下通路は反対側に伸びてるし、途中に下水も通る。地上の城壁に穴は見当たらないし、正攻法で行かない?」
「この夜間に、この”ファルギーセ”からすると、見たこともない不思議な格好をした男女へと衣服を恵んでくれるような、奇特な方が居るならばそうしますが」
「だよねぇ〜、無理だよねぇ〜」
大げさに片手を頭に当て、夜空を仰ぐリアクションをとる。
今回の任務に際し、この世界”ファルギーセ”で動くための服一式と、必要な通行証や身分証明証を本部から支給される筈だったのだが、『揺れ幅変動に伴う取引注文』の結果、大量に”存在の買い戻し”が行われてしまったため、その購入対象を連れ戻すために、多数の送迎員が送り込まれた。
そのため、本来ならば足りるはずの必要な物一式の数がまるで足りず、本部に詰めていた時のスーツ姿での世界入りとなった。
「だからさ、正攻法で行かない?」
「課長のおっしゃる正攻法の意味がわかりかねます」
「君らの扱う”日本語”ってむずかしいねぇ、カスミちゃん?それは『わからない』っていう意味?」
「そのとおりです。上司であるあなたを敬って言いました」
「敬ってくれるならついでに労って欲しいなぁ〜。あとついでに、もっとこう・・・砕けたしゃべり方で良いんだよ?」
「性格ですので」
「そうかい。ま、”世界”の好意で、出身世界が違えども言葉が通じるように取り計らってくれてるから、わからなければ素直に聞けば答えてくれるのはありがたいけど」
言いつつ手指の関節をポキポキ鳴らす。
「できればこう、望んだように聞こえて、望んだように伝わって欲しいもんだね」
ぎゅっと拳を作ると、ゆっくり腰だめに溜めて正拳突きの構えを取る。
「まさかとは思いますが、あの衛兵詰所にいる兵士をまとめて倒して気絶している間にすり抜けるということですか?」
「その通り・・・さっ!」
ブンッ!と正拳突きの素振りをする。ほんの僅かに遅れて何かが爆発するような、ボンッ!という小さな音が耳を貫く。
その音よりさらに少し遅れて、王都入口の横に設けられた衛兵詰所が、門の前で規則正しく動く人影もろとも跡形もなく消し飛んでいた。
「あ、加減間違えちゃった」
「・・・・・・・・課長」
「いや、悪気はないんだ」
「真体の能力悪用による現地人殺害。本部で始末書ですね。ファルギーセから詳細を聞いたうえで、枚数が決まりますのでお覚悟を」
「悪用って・・・・必要なことだからやっただけだよ?それを・・・・見逃してはくれないよなぁ・・・・」
途中まで言いかけたが、ジトッと睨まれたために諦めて弱気になる。
「こういう時のためのペアですので」
「はぁ。まぁ、気絶とは行かなかったが、ほら、今のうちに早く侵入しないと。交代やら見張りの巡回が来たら騒ぎになっちゃうしさ、早く」
「急かしても枚数は減りませんよ?」
「わかってるって」
ジト目の部下の背中を押しながら、警備ががら空きになってしまった入り口を通り抜ける。
タブレット端末に映しだされる情報を元に、カスミちゃんが道案内をし、段々と薄暗く入り組んだ裏路地へと入り込んでいった。
ここまでが先ほどの回収対象接触までのあらまし。
☆ ☆ ☆
ーーーー先ほどの惨劇の現場から急ぎ離れることしばし。
「しかし、王都にしちゃぁ、静かだな」
「それはまあ、夜ですし」
口元をハンカチで押さえ、まだ気持ち悪いのか、青い顔をしているカスミちゃん。
片手で持つタブレット端末に、回収対象がどこへと姿をくらましたのかを示すマーカーが出ているため、地図を見ながら追跡中である。
「まだまだ大の大人が歓楽街を闊歩しててもおかしくはない時間帯じゃないか?それにしちゃ、やけに静かだぜ」
「おそらくは回収対象が関与しているものと思われます」
「あの少年が?そういや、いつもどおり前情報無しで接触したけど、なんだいありゃ?ボクの知る人間としての種族の範疇を超えてる動きをしていたぞ?」
「興味お有りですか?」
「あるね、俄然出てきた。景気づけにこの辺りの酒場で一杯ひっかけてから、一発ぶん殴って黙らせてやろうと思ってたのに、肝心の酒場がどこも開いてない。人っ子一人いない夜の王都なんて、ボクの知る限りじゃぁ、どこの”世界”でもここだけだな」
「では、情報を読み上げますね」
カスミちゃんが端末に目を落とす。
<回収対象>
名前:アダチ ヒデオ
年齢:13歳
出身:”地球”世界
現在のクラス:凄腕の暗殺者、暗殺者ギルド幹部候補(ギルドマスターの娘の嫁入りが確定済)
召喚ボーナス:身体能力極限向上(ある程度鍛えきった勇者級の体捌きが可能レベル)
召喚デメリットボーナス:知力低下(読み書き計算が苦手になる、異世界での文字の理解力が皆無になる、言語能力の低下ペナルティ有り)
備考:「一人殺せば殺人、百人以上殺せば英雄」という言葉の意味をぼんやり考え、異世界での魔物討伐を夢見ていたところ、世界の取引の駒にされた。召喚前に気に入って読んでいた英雄譚の始まりは『王都の路地裏に喚び出され、身ぐるみ剥がされつつも謎の美人の女の子の助けを得ながら成長していく』ものだったが、現実に起こったのは『助けてくれた相手が暗殺者ギルドの幹部でギルドマスターの娘というオチがつき、剥がされた身ぐるみを返してほしくば対象を殺せ!と唆され、初めて人殺しを行うという非情なもの。そのまま魔物を殺すよりも人間を殺すほうが簡単なことに気付き、ぼんやりと考えていた事を根底に刷り込んでしまったまま、召喚先の王都で人の殺害を重ねるに至る』だった。根は優しい少年だったが、殺害を重ねるごとに沸き起こる罪悪感を、さらに殺害を重ねる快楽で打ち消すという狂気の悪循環に陥ってしまったため、将来的に王都どころか人間社会を裏から支配する暗殺王へと成長見込みアリの”大物存在”へと化けた。『存在交易』の取引額としては有害判定ながらも、買い戻しとして積まれたチップは二山合わせて20枚。
<取引対象>
名前:勇者予定者アザカタ。
年齢:13歳
クラス:中学生(仮) 本来なるべきクラスは勇者→救世主→初代統一王(統治年数34年)
召喚ボーナス:知力向上(読み書き計算、並びに地球世界における高等教育まで理解出来るだけの理解力向上)
召喚デメリットボーナス:身体能力低下(”地球”世界の平均的13歳男児の運動神経まで元の能力から下がる。どれだけ鍛えても上昇見込み無しペナルティあり)
備考:本来ならばもう少しで起こるであろう、”ファルギーセ”世界での危機を救う勇者になるはずだったが、争うことを嫌い、世界平和を願って平和な世界を夢見た結果、取引額が救世主になる前の状態のアザカタと、平々凡々な異世界での活躍を夢見たアダチ少年の存在が交換成立されてしまったため、望むままに勉学に励んで平和ぼけした生活を楽しんでいた。救世主として成立していないため、存在の取引額としてはほぼ価値無し。アダチ少年の抜けた存在の穴をふさぐ形で溶け込み、名前や容姿が違うにもかかわらず、周囲にはそういう存在として違和感なく溶けこみ生活を続けていた。買い戻しに伴う整合性の条件合わせとして、地球世界に紛れ込んだ他世界のツケを精算するついでに抱き合わせで違う世界への召喚として取引される予定。現在は本当に無価値、無害判定で精算のおまけ扱い。
「・・・成る程成る程。つまり、アダチ少年は昨今あちこちの”世界”で流行りになっている異世界英雄譚に憧れ、ゲートを開けてしまって取引の駒にされたと」
「そうなります」
「まあ見事にお互いの境遇と思い描く初期条件が合致してるねぇ。けど、その後の行動次第では、望んだような未来へは必ずしも進むものではないのが現実というやつだなぁ。『元いた世界を捨てる』という罰則で知力を失い暗殺者となったアダチ少年が、すでに王都の夜を跳梁跋扈しすぎている状況じゃ、流石に酒場もあかないか」
「知力低下している状態では、脅されれば選択の余地もなかったでしょう。成るべくして堕ちていったといったほうがいい対象です。一方のアザカタ少年も、生まれがこの薄暗い路地裏の孤児とあって、常日頃から争いごとの中に身をおくことが多かったようです。ゆえに、そういった騒動のない、かつ清潔で勉強もできる環境を夢見たのでしょう。アザカタ少年は”地球”世界で青春を満喫しているようで、帰還を強く拒んでいたため、”エヴェスタ”が賢者候補を探していたところに呼び出されるようです。彼のペナルティ・・・あぁ、世界を捨てた罰則といえば通じますか?まあ、その罰則が体力が伸びないというだけなので、引きこもりの賢者を欲していた”エヴェスタ”にはちょうどいい支払いになったと思います」
「それが本当にちょうどいい支払いになるかどうかなんて、先のことなど誰もわからないさ。そうだろう?・・・かすみちゃん、このまま真っ直ぐでいいのかい?」
先頭を歩き、左目を竜眼にして襲撃に備えながら、カスミちゃんを守るようにして進む。
「えぇ。あと3ブロック進んだ先を左の突き当りにいます。そういえば先ほどの接触で説得していたようですけど、何を話してたんです?」
「彼が成りたかったものさ。・・・・成る程、英雄・・・・ね。備考にある、『一人殺せば殺人、百人以上殺せば英雄』という言葉、いいねぇ。オジサン、気にったよ。カスミちゃんの居た”地球”世界での名言かい?」
「厳密に言えば百万人ですが。それと、その発言の主は喜劇王と呼ばれていました」
「っほ!笑いを取る人間がどうしてそんな、ぶっ騒なことを言ったのかね?オジサンわからないな」
発言の主の異名におもわず変な声が出た。理解不能だからだ。
「まあその背景には、人間種同志の様々な思惑やら法が絡みあった事情もあったようなので。一種の皮肉でもあるのですが、詳しいことやその正しさや間違いをを説明するには時間が足りません。続きは本部の図書室でお調べになってはいかがでしょうか?」
「皮肉・・・・・ねぇ。まぁそうだね、竜種であるボクには、君たち人間種を理解するのに時間という概念をどれだけかけても問題ないからね。君たちの手で書かれた本を読んで色々学ぶとするよ。次の角を左かい?」
「はい。気をつけて」
「言われなくとも」
返事を返すやいなや、全身に真体の鱗をまとい、人の姿のまま、ほぼ竜化する。
真体での力に比べれば、0.5%程度にも満たぬの力だが、人間種はこれでもあっさりと壊せてしまう程度に脆い。
とはいえ、先ほどの驚異的な身体能力を発揮したアダチ少年を、防備無しに捕らえるのは難しいと判断しての竜化だ。
本部からの指示書はただひとつ、『生かして捕らえよ』だ。
竜化による体重増加で、一歩ごとにずしりずしりと足音が響く。
竜眼で所在を捉えているため、こちらの接近などモロバレであるが、もとより姿を隠す必要が無い。向こうが仕掛けてきたところを、軽く反撃して関節を捻ってやれば良い。そうすれば動きが鈍るし、捕らえやすくなる。
「さて、アダチ少年。逃げ終わったかい?」
街灯のない中を、口から吐き出す小さな炎でチロチロと照らす。
そこに浮かび上がった彼はというと・・・・・頭を抱えてうずくまって、そして泣いていた。
続きのヴィジョン見えているので、ある程度均一感覚で投稿が続けれると思います。
拙い内容では有りますが、今後も生暖かく見守っていただけたら幸いです。