《中学1年生編》
「そ…その怪我、大丈夫なんですか!?」
高木先輩があまりにも平然としてて、痛くないのかなって一瞬思ったけど…
「問題は、ありません。お見苦しい姿ですが、見た目程大した痛みはないです」
あ…ちょっとは、痛いんだ…
そりゃ、そうだよね。
いくらロボット染みていても、生身の人間なんだから…
そんな失礼な事を考えてる間に、クリアさんが高木先輩の体に出来た傷口を診る。
「擦過傷、12ヶ所…どの傷も、浅いな」
浅くても、痛そうな事に変わりない…
水無月先輩も心配そうに、高木先輩の傷口を見てる。
「……クリア、その他には異常ないのか?」
美空君に聞かれて、クリアさんは落ち着いた声で答えた。
「骨や筋肉など、異常は見られません。傷口から血が流れているせいで酷いように見えますが、既に血は固まっていますから大丈夫です。本人が言っていた通り、大した事はないでしょう」
そう言って、クリアさんは部屋に戻ってきた。
テーブルに置かれた水が入ったピッチャーを手に取ると、再び廊下に出て縁側にそれを置いた。
「クリア様、何をするおつもりですか?」
一連の動作を不思議に思った高木先輩が、クリアさんに問いかけた。
「手当てに、決まってるだろ…大和、こっちにおいで。楓ちゃん、棚から救急箱取って。朔也様達は、食事を続けて下さい」
指示に従って縁側に出た高木先輩を座らせて、傷だらけの右腕に容赦なくピッチャーの水をかける。
「……ぅ…ッ…!」
水をかけられたのが相当滲みたのか、高木先輩が小さな声で呻いた。
うわ…痛そう…
俺だったら、間違いなく叫んでるよ…
「はい。我慢、我慢……っと、拭く物忘れてた……お?」
立ち上がりかけたクリアさんの目の前に、救急箱を持った水無月先輩から真っ白なタオルが差し出された。
「そう言われると、思いました。ちゃんと準備をなさってから、手当てを始めて下さいな」
「ごめんね。使わせてもらうよ」
苦笑してタオルを受け取ったクリアさんは、高木先輩の手当てを再開した。
「……桐生、見ていても俺達には何も出来ない。とりあえず、今は食事をしよう」
「あ、うん…そうだね」
短く答えて、手当てを受ける先輩に背を向ける。
俺は、こうすれば血を見ずに済むけど…
対面に座ってる美空君からは、ばっちり見えちゃってるんじゃ…
そんな事が気になって顔を上げたら、美空君と目が合った。
え…?俺の方を、見てるの?