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~絆~大切なモノ  作者: 裕加
第2章 親友との出会い
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《中学1年生編》

【朔也side】


ーー30分前・東屋…


「美空君は、どうして止めさせたいと思うの?始めた時は、散々だったけど…大分、形になってきたんだ。道場に、見に来ない?」

『どうして止めさせたい』か…

理由は分かっているが、それを桐生に伝える事は躊躇ってしまう。

あの事件の事は、桐生には何の関係もない。

無意識の内に、自分の手を握り締めていた。

「……暴力では、何も解決しない…」

あんな思いは、もう嫌だ…


「僕が桐生君に教えてるのは、暴力じゃなくて護身術ですよ。大和が空手部に入るのはあんなに喜んでて、どうして桐生君は駄目なんです?」

空手部は、部活…

部活はスポーツであって、規定のルールもある。

だが…桐生が身体を鍛えるのは、部活の為ではない。

「……桐生に、怪我をさせたくない…」

高木が『攻撃はしない』と言った以上、勝負の際に桐生が怪我をする可能性は限りなく低い。

無理な特訓さえ、しなければ…


「ごめんね。心配してくれて、ありがとう。よかったら、道場に見に来てよ」

道場に行けなくなったのは、いつからだろうか…

思えば、あの事件の直後だった。

道場は元々、高木の父親が管理し師範を務めていた。

いなくなった事を自覚したくなくて、いつしか行けなくなっていた。

「今から、道場に行くのかい?僕も、行くよ。朔也様は、どうなさいます?」

聞かなくても分かっているはずなのに、どうして聞いてくるんだ…


「……行かない」

俯いているせいで、桐生とクリアがどんな表情をしているか分からない。

顔を上げて確認する事も出来ないまま、2人の足音が遠ざかって行った…

コップの中の氷が溶けてカランと音がして、ようやく顔を上げる。

自分以外いなくなった東屋で、聞こえてくるのはセミの声…

それが暑さを助長し、身体が喉の渇きを訴える。

クリアが作ったレモネードの冷たさが、渇きを潤し身体に染み渡っていく。


『道場に、見に来ない?』

『大和が空手部に入るのはあんなに喜んでて、どうして桐生君は駄目なんです?』

理由は、至極簡単…

高木が部活をするにしても試合に出るにしても、それはこの家の道場で行われる事ではないからだ。

今でもまだ、あの人達を思い出してしまうんだ。

高木の父親と、水無月の父親…

俺を守る為に闘って、殺された人達…

道場は、あの人達と過ごした思い出があり過ぎる。

だから、まだ…行けそうにない…

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