《幼少編》
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さっきまでいた部屋から刀を向けられながら歩いて、ハナレの1番奥の部屋…庭を見るために大きな窓がある部屋に連れてこられた。
血がついたままの刀が、私に向けられた。
もう1人の男が、大きな窓の方に歩いていく。
窓がある所の足元は床の間になっていて、テーブルと2つのイスが置いてある。
向かって左側のイスをひいて、朔也様を見る。
「御子息様は、こっちに座って頂きましょうかね」
不安そうな目をした朔也様が、私を見つめている。
こんな所まで連れてきたくらいだから、すぐに殺されたりはしないと思って行かせようとした時…
ーーバシッ!
「…………ッ…!」
「いつまでグダグダやってんだよ!とっとと、あのイスに座りやがれ!」
刀を持った男が、朔也様のお顔をたたいた。
なんて事を…!
「朔也様ッ!……………」
近くに行こうとした私の首を、大きな男の手がつかんでいた。
「どこ行く気?お前は…こっちだ!」
ーーーーーダンッ…!!
「………ぐ……はッ…!」
首をつかまれたまま、うしろにあったカベに思いきり押しつけられた。
首には大きな手…背中にはカベ、目の前には刀…
「やまとお兄ちゃんッ!」
「うるせぇ!何が『やまとお兄ちゃんッ!』だ!てめぇが、とっととイスに座らねぇからだろうが!早く行きやがれ!」
どなられた朔也様は、その小さな肩をふるわせながらイスに座られた。
「悪いねぇ、アイツは短気でさぁ。君が言う事聞いてくれないとさ、やまとお兄ちゃんがどうなっても知らないよ?」
「そんな…ころすなってけいやく…」
ふるえた声で朔也様が言うと、あやまった男がまたニヤリと笑った。
「その契約にはさ、続きがあるんだよ。《ガキは殺すな。しかし、御子息様が見つかれば他のガキは用済み》ってね。つまりさ、既にやまとお兄ちゃんは用済みって事。柱にくくりつけて来た女のガキも用済み」
用ずみという言葉に、朔也様の目からなみだがこぼれた。
「………へん…だよ…」
「『へん』?おかしいって事かな?今の説明、どこがおかしかった?」
朔也様の近くにいる男は、私に刀を向けている男と違って話は聞いてくれるらしい…
「………ボクをさがすのがもくてきっていうのなら男のガキはころすなって言えばいいのに、どうして女の子までけいやくにいれたの…?」
「「…………………」」
2人の男が、おどろいた顔をした。
「君…自分の顔、鏡で見た事ある?」




