《中学1年生編》
桐生の為…
高木からは、攻撃しない…
猶予は、10ヶ月…
10ヶ月後にあるのは、卒業…
高木の目的が、読めてきた。
自分達の卒業後、俺を守る者として桐生を鍛え上げるつもりか…
俺は…そんな事をさせる為に、桐生と《友達》になった訳ではない!
「何も知らない者を、勝手に巻き込むな!桐生…このような条件、聞き入れる必要などない。元より…《友達》と認めるか否かを、高木に決めさせる事自体が間違いなんだ!」
時代錯誤も、甚だしい。
いつまで、旧時代の取り決めに縛られていれば気が済むんだ!
「お気持ちは、分かりますが…この条件を了承されたのは、桐生様自身でございます。条件の破棄を申し出られるのならば、今後一切桐生様と関わられてはなりません」
……ッ…!
自分の友人でさえも、自分で決める事が出来ない。
《どうか、幸せになって…》
俺が産まれた13年前の今日、お母様が俺に遺したという言葉…
何一つとして自分の思い通りにならないのに、どう幸せになれと言うんだ!
この無力さが、悔しい…
誰かに頼る事でしか、生きられない…
こんな俺と…例え3日間だけでも、《友達》となってくれた。
それだけで、もう充分だ。
「……桐生、もういい。これ以上、お前に迷惑はかけられない。《友達》になってくれて、ありがとう………嬉しかった…」
誰かと深く関われば、その人に迷惑がかかる。
最初から、分かっていたはずなのに…
「何が、もういいの?《友達》になってほしいって言ったのも、どうやったら認めてもらえるかって聞いたのも俺だよ!俺の気持ち無視して、勝手に話を完結させないでよ!」
無視したつもりは……
いや…しているかもしれない…
でも、俺は…誰かの人生が、俺のせいで狂わされるのを見たくない。
「……お前は、どうして…俺なんかに、関わろうとする!?俺には、自由なんてものはないんだ!何もかも、1人で決められない…」
もうすぐ、桐生の伝えた場所に到着する。
これでもう、最後になる…
「そんな事で、俺が諦めると思ってるの?随分と、見くびられたもんだね…」
な…何を言っている!?
「見くびっている訳ではない!俺には、自由が……ッ…!?」
なぜ、桐生は笑みを浮かべている?
どうして、この状況でそんな顔が出来る?
「美空君…《自由がない》なら、俺が自由にさせてあげる。友達になる為の条件なら、喜んで引き受けるよ」