《幼少編》
――1時間後…
お月さまがまぶしくて、目がさめた。
おへやの中には、ボクしかいなくて…
「……お兄ちゃん…?やまとお兄ちゃんッ!」
どこに行ったの!?
こわくなってショウジを、力いっぱいに開けた。
――ガラッ…!!
目の前には、血のように赤い月が…
「……ッ……!!」
とてもこわくなって、立っていられない。
―――バタバタッ…!
この足音…
「やまとお兄ちゃんッ!」
足音のするほうへ、思いきりさけんだ。
お兄ちゃん、はやく…
「朔也様……ッ!?」
すがたが見えた時には、やまとお兄ちゃんにだきついていた。
「……もう、どこにも行かないで…」
こんな不安な夜に、1人にしないで…
フトンに入ると、やまとお兄ちゃんがやさしく頭をなでてくれる。
「安心して、お眠り下さい」
それでもまだ、不安なキモチはきえなくて…
「やまとお兄ちゃん…ずっと、ここにいる?」
目がさめた時に、だれもいないのはイヤ…
「ここにおります。いつまでも、あなた様のおそばに…」
頭をなでてくれる手があたたかくて、ウトウトしはじめた時…
――ガシャーーン…!!
なにかがわれる音といっしょに、たくさんの足音が聞こえる。
どこかとおくで、どなり声も…
そして、ひめい…
閉められたショウジのむこうで、なにがおこっているの…?
足音が、どんどん近づいてくる。
こわい…!
聞こえないように耳をふさいでも、大きな音とひめいが聞こえる。
お月さまのあかりで、ショウジに人かげがうつって…
――ガタッ…!
「朔也様…お逃げ下さい…」
ショウジを開けた人は、ボクがよくしってる人で…
つい1時間前にあってたのに、そのすがたはかわりすぎていた。
「父上ッ!?そのおケガは、一体…?」
かたから血をながして、白かったシャツはまっ赤になってた。
「説明をしている時間はない。大和…朔也様を連れて、逃げろッ!」
「なぁに、勝手な事言っちゃってんの?御子息様は俺達が預かるんだから、連れて行かれちゃ困るんだよね」
お月さまのあかりで、ショウジにうつされたもう1つの人かげ…
手にもっているカタナまで、はっきりと見えて…
「大和ッ!何としても、朔也様を守るんだッ!」
「朔也様、こちらへ!」
うでをひっぱられて、おくにあるフスマからおへやを出た。
「だ~か~ら~、御子息様を渡してって何度も言ってんだろ?分かんねぇ人だな、あんたも…そんなに、あの人と一緒の所に行きたいの?」
あの人…?