《中学1年生編》
毎月の事だが、いつも思う…
この会食に、俺が同席する意味は何だ?
お祖父様の思惑が、未だに分からない…
「朔也、そこにおるのか?こちらへ、来なさい」
「……はい」
部屋の中からお祖父様に呼ばれて、その部屋の障子を開けようとしたらクリアに止められた。
クリアは障子に向かって正座し、ゆっくりした動作で障子を開けていく。
「お待たせ致しました。今回は僕がお迎えに上がったので、朔也様も少々戸惑われてしまったようで…」
それは、事実だ…
いつもと勝手が違うから、正直どうしたらいいのか…
「なぜ、お前が《教育係》の真似事を?高木家の者は、どこへ行った?」
クリアの父親であり、俺の主治医が問い詰める。
「あ…はは…道場で稽古してたら、思わず力入っちゃって…つい、本気で……」
「本当に…痣になったら、あなたのせいですからね?クリア様」
声がした方を見ると、俺達とは逆方向から高木がこちらに歩いて来た。
その左腕には、包帯が巻かれている。
クリアの隣に正座した高木が、お祖父様と主治医に頭を下げる。
高木の言葉を聞いた主治医は、クリアの腕を掴んで立たせた。
「お前…高木に、怪我を負わせたのか?本気の稽古は慎めと、あれ程言っておいただろう!?」
「問題ないって!素人相手に、本気出した訳じゃないんだからさ。大和も、誤解生む言い方すんなよ…その腕は、軽い打ち身なの!今日は、念の為に包帯巻いただけ!」
軽い打ち身でも、怪我をさせた事には変わりないのでは…?
正座をしたままの高木の隣に座り込んで、包帯の上から左腕に触れた。
「……触ると、痛いか…?」
「今はもう、痛みはほとんどありません。ご心配をおかけして、申し訳ございません」
よかった…
本当に、大した怪我ではないみたいだ。
「あの~…朔也様?何か、僕って…完全に悪者になってません?」
「……悪者だと思われている自覚が、お前にあったとはな…」
クリアの体から力が抜け、その場にへたり込んだ。
「これぞ正に、自業自得というヤツだな」
「何でさ!?『本気で稽古』って言葉に、乗ってきたのは大和だよ!?朔也様!どうして、僕の評価がそんなに低いんです!?」
……どうしてって…
そんな事、決まっている。
「……それは、日頃の行いじゃないのか?普段の評価が低いから、たまにいい事しても±0に近付くだけ………言い過ぎたか?」
「さすがは、朔也様。正当な評価です」