《中学1年生編》
「依…存…?」
「そう…《依存》というのは、大きく分けて3種類ある。1、《人への依存》…2、《プロセスへの依存》…3、《物質への依存》…お前の場合は、間違いなく1の《人への依存》だから…2と3の説明は、省かせてもらうよ。《人への依存》にも色々種類があるけど、お前に当てはまるのは《共依存》ってヤツかな。共に依存するって書いて、《共依存》」
『共に依存する』…
朔也様も、何かに依存している…?
「朔也様が何かに依存されているようには、見えないのですが…」
クリア様のグレーの瞳が、私の心を見透かすように細められた。
「正確には、依存していた…かな。事件前の朔也様を、思い出してみなよ。お前を『やまとお兄ちゃん』と呼んで、いつもベッタリくっついてさ…夜寝る時も、近くにお前の姿がないと…まるで、この世の終わりみたいに泣き叫んでた。でも…あの事件をきっかけにして、朔也様の依存症状は徐々に薄れていった」
私は逆に、あの事件をきっかけに依存症状が強くなってしまったのか…
「《共依存》について、詳しく教えて下さい」
もっと詳しく知って、治せるものなら治したい。
クリア様は頷くと、一度だけ天井を見上げてすぐに視線を私に戻した。
「《共依存》を、一言で言うとしたら…《他者に必要とされる事で、自分の存在意義を見い出す事》なんだ。自分自身への過小評価のせいで、誰かに認められる事でしか安心や満足を得られない」
その『誰か』が、私にとっては朔也様だという事か…
『私はもう必要ないと言われているようで、怖くなった』
朔也様から『必要ない』と言われた事など、実際には一度もない。
なのに…一体なぜ私は、こんなにも恐怖を感じている?
「……それを、治す方法は?」
「簡単な事さ。お前の自己犠牲的な献身を、止めればいいだけ」
献身を、止める…?
そのような事、出来る訳が…
「それは、無理です。私は、従者として……」
「ストップ!ストップ!お前ね…『従者として』なんて言い訳、今後一切禁止!従者である前に、1人の人間である事を忘れるな!空手が、好きじゃないのか!?勧誘された時、自分の力を試したいとは思わなかったのか!?《朔也様の為》じゃなく、自分の気持ちに素直になれた時…お前の依存症状は、治るよ」
自分の気持ち…
強くなりたい。
もっと、技を磨きたい。
「私の…私の力が、大会でどこまで通用するのか知りたい…」