《中学1年生編》
【大和side】
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ーー帰り道・車中…
車に乗ってから、約10分…
その間、ずっと楓の説教が続いていた。
「あなたはどうして、自分の事になると優柔不断になるの!半年前からキッパリ断っていたら、今回のように…朔也様にご迷惑がかかるなんて事には、ならなかったのよ!?」
自分としては、キッパリ断っていたつもりなのだけど…
「……高木、お前の本心が知りたい」
私の、本心…?
「私は…入部する気は、ありません。私の時間は、部活などに費やすべきではないと考えております」
私の全ては、朔也様の為に…
それが、嘘偽りのない私の本心…
「……お前は、空手に興味がないのか?」
興味…ないと言えば、嘘になる。
強くなりたい私にとって、自分に1番向いている武術だと思っている。
「興味は…あります。強くなる事に、喜びを感じるのも事実です。しかし、私の時間は…」
「俺の為に使う…?」
従者の私にとって、自分の時間は主の物…
興味があるというだけの曖昧な事に、費やす物ではない。
「それが、父上から引き継いだ私の役目。そして…『朔也様を、何としても守れ』というのが、私の父上の遺言なのです。朔也様を守る手段として選んだ武術で、自分の興味を最優先させる事は出来ません」
『遺言』の言葉で、朔也様の表情が暗くなる。
自分は、卑怯だ…
これ以上の追求から逃れる為に、主に嫌な事を思い出させた…
「……………俺は……大会に出たお前を、見たかったな…」
「……は…?………申し訳ございません…」
予想外のお言葉に、失礼な聞き返しをしてしまった。
「朔也様は、大和が空手部に入った方がいいと思われるのですか?」
楓の聞き返しに、朔也様はゆっくりと頷いた。
「……体を鍛えるだけなら、家でも出来る。だが…それは、実戦で使えなければ意味がない。その実戦をするのなら、部活をして大会に出るという方法が手っ取り早い」
確かに…守ると言っても、普段の生活で誰かと戦う機会なんてないのが実状…
「しかし、それでは…朔也様に何かあったとしても、守れないという事態になりかねません」
「ちょっと!あなた、先程から私の存在忘れてない!?それとも、信用されてないのかしら?あなた1人で、朔也様をお守りしている訳ではないのよ!?」
信用は、している。
してはいるが…女性である楓と男の私では、守る事についての役割が違う。