《中学1年生編》
【大和side】
食堂のテーブルの上に、次々に並べられていく重箱…
さすがに、1人で食べきれる量ではない。
「楓…これでは、量が多過ぎではないのか?」
「何、言ってるの!朔也様は、育ち盛りなのよ?これでも、少ないくらいだわ!そうですよね?朔也様♪」
駄目だ…《育ち盛り》を、勘違いしている…
楓の言葉に呆れながら視線を動かすと、混み合う食堂を通り抜けて行く数人が目に止まった。
先頭に2人、後方に3人…
合計5人に、囲まれるようにして歩く1年生。
先程、朔也様の教室で言葉を交わした…
あの位置関係からして、友好的な関係ではない事は一目瞭然…
「……気になるのか?」
………ッ…!
私の心を見透かすように、朔也様の目が私を見上げている。
「いえ…申し訳ございません…」
主の事以外に意識を向けるなど、あってはならない事なのに…
「大和…あなた、どこか変よ?何があったの?」
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朔也様の食事中の時間を利用して、教室であった事を楓に話した。
「…………………その時の1年生が、食事もせずに通り抜けて行ったんだ」
「確かに、それは気になるわね…ここを通り抜けても、あるのは部室棟だけだし…昼休みに、行く場所ではないわ…」
それに、あの5人…
1年生が逃げられないように、周りを囲んでいた。
「考えられるのは、イジメかカツアゲか…どちらにしても、低俗極まりない」
ーーガタン…
「食事中に後ろでそんな話をされては、どんな料理も不味くなる」
席から立たれた朔也様が、私達を見詰めている。
「「申し訳ございません」」
「………水無月、ここで少し待っていろ。高木は…今すぐ、部室棟へ案内しろ」
部室棟…あの1年生が、向かった場所…
「御意」
「なりません!朔也様御自ら、不良に近付かれるなどッ!大和も、お止めしなさい!」
止めるも何も、私にとって朔也様の命令こそ全て…
楓が心配する気持ちも、充分に理解出来るが…
「問題はない。何があったとしても、朔也様に指一本触れる事は私が許さない」
「絶対よ?自分が言ったんだから、絶対に守りなさいよ!」
しつこいくらいに、何度も念押しされる。
確認されるまでもなく、朔也様に危険が及ぶような事は絶対にしない。
「お前達…随分、好き勝手言ってくれているが…俺も、今まで鍛えてきたんだ。不良の1人や2人…」
「「それだけは、絶対にしてはいけません!」」