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~絆~大切なモノ  作者: 裕加
第2章 親友との出会い
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《中学1年生編》

「……………な、何言って…そんなの、お前達の勘違いだよ…僕に、そんな価値…ある訳、ないじゃないか…」

珍しく、動揺されている。

声が震えている事を、本人は自覚しておられるのか?

朔也様のお名前を出せば、クリア様は途端に弱くなる。

卑怯かもしれないが…無謀な作戦を止める為に、利用出来るものは徹底的に利用してやる。

「楓、あの話を…」

「了解。任せておいて」

私達のやり取りに、怪訝そうな目を向けられる。


あと少し…あと少しで、朔也様の元にクリア様が戻ってくる。

今まで以上に慎重に事を運ばなければ、全てが無駄な徒労で終わってしまう。

「『あの話』って、何…?」

人を無下に扱わないクリア様の性格が、今は有り難かった。

「私達がアメリカへ渡った当初、毎晩のように朔也様はうなされておられました。『クリア、ごめんなさい』と…」

そればかりか、ろくに食事も摂られなかった。

「どうして…今は!?まさか…」


『まさか…』今でもうなされておられるのか、とお聞きになりたいのだろう。

楓も察したようで、クリア様の質問に答える。

「大丈夫です。今は、うなされてはおりません。その治った原因とは、この1通のお手紙でした」

そう言って1通のエアメールを、クリア様に差し出した。

エアメールの受取人は朔也様、差出人は…

「……………父さん?何で、父さんが朔也様宛に手紙を…一体、どんな事書いて……これ、中を見ても?」


気になっていても、他人宛の手紙を見る事に抵抗があるのだろう。

確認してくるクリア様に、私と楓は大きく頷いた。

封筒から手紙を取り出したクリア様の視線が、手紙に書かれている文字を追っていく。

そして2枚目に差し掛かった時、その視線はある一点から動かなくなった。

手紙の、その場所に書かれているのは…

ーークリア様が、空手で全国3連覇を成し遂げた事…

ーー跡を継ぐ為に、医学部への進学を決めた事…


まるで自分の事のように書き綴られた文章は、親としての喜びに満ち溢れている。

手紙が、届いた当時…9歳だった朔也様が、何度も何度も読み返しておられる姿をお見かけした。

それから3ヶ月おきに届く、クリア様の近況を記した手紙を心待ちにされていた。

「その1通だけではなく、今まで届いたお手紙全て大切に持っておられます。これで、分かったでしょう?何とも思っていないのなら、何年も後生大事に持っておりませんよ」

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