《中学1年生編》
出来る事なら、誰にも言わずに実行したかったんだけど…
はぐらかすのも、そろそろ限界かな…
「やっと、教えて頂ける気になりましたか?ですが…少し、お待ち下さい。もう1人……」
「私なら、とっくにいるわよ。話が、長いのよ。大和…抜け駆けは、許さないわ」
女の声が聞こえて、菩提樹の後ろから楓ちゃんが姿を現した……って、お前達は何になりたいの!?
さっきからやってる事、暗殺者か忍者だよ!!
「いつから?」
いくら菩提樹が大きいと言っても、ずっと隠れてるなんて不可能に近い。
それに…楓ちゃんは、朔也様の身辺警護兼世話係だ。
長時間、気配を断っている事なんて出来ない。
『いつから?』って質問は、楓ちゃんに対してのものだったんだけど…
「先程も申し上げました通り、あなた様が不様に泣き顔を晒しておりましたので…朔也様と他1名をお目汚しから遠ざけ、その元凶であるあなた様に声をかけました」
おかしいだろ!!
何が、『先程も申し上げました通り』だ!
さっきより毒舌がキツくなってる上に、桐生君もちゃんと名前で呼んであげて!
そもそも、大和!お前に、聞いたんじゃないからね!!
「お前は何回、僕を貶めれば気が済むの!?あー、もう!楓ちゃんは、いつからそこにいたの?」
だ、大丈夫…きっと、大丈夫だ…
楓ちゃんだったら、コイツみたいな毒舌は絶対に使わない。
………なんか…思ってて、虚しくなってきた…
「私がここへ来たのは、丁度…大和が、クリア様を締め上げた時です」
「それって、いつ!?胸ぐらは掴まれたけど、締め上げられてはいないよ!?」
ダメだ…この真顔でのボケが2人揃うと、僕1人じゃツッコミ切れない…
落胆する僕の左肩に、大和がそっと手を置いた。
「クリア様…」
普通はここで慰めの言葉がかけられるのだろうけど、コイツに限ってそれは期待するだけ無駄だ。
「な、何?」
果てしなく、嫌な予感…
「またうやむやにして、話を終わらせるおつもりですか?今度ばかりは、逃がしませんよ」
……え?何、これ…僕のせいになってるの?
おかしくない?この頁の最初見て!
そう!話を止めたのは、お前だ!バカ大和!!
……痛い…肩が、物凄く痛い…
軽く睨んだだけなのに、手を置かれた左肩から激痛を感じる…
「分かった、分かった!頼むから、無言の暴力やめて!」
「軟弱な…」
そういう問題ではないから!