《中学1年生編》
朔也様のお言葉に、一喜一憂している自分がいる。
たった13歳の少年に、いとも簡単に心を動かされる。
いつからこんなにも、大切な存在になったのか…
僕に、笑顔を見せてくれた時から?
その可愛らしい声で、僕の名前を呼んでくれた時から?
思うに、それは……
「心の声が気持ち悪い方向に行っているので、とりあえず殴ってもよろしいでしょうか?」
……ッ…!?
や、大和!?
「なんで…って、あれ?朔也様は!?」
気付けば隣に朔也様のお姿はなく、代わりに呆れた顔をした大和が僕を見ていた。
「お2人共、東屋の方へお戻り頂きました。あなた様にも声をかけようとしましたら、物凄く気持ちの悪い心の声が口から洩れ出ておりましたので…軽く…いえ、かなり引いてしまいました」
言い直した方が、酷いってどうなの?
東屋へ目を向けると、そこへ歩いて行く朔也様と桐生君の後ろ姿が見えた。
「朔也様に聞かれなくて、よかった…」
「もし聞かせていたら、あなた様は今頃この世におられませんよ」
それって、抹殺!?
心の声聞かせただけで、僕は存在ごと抹殺されるの!?
しかもコイツ、その気になれば本気で殺りかねない…
「お前、いつもに増して毒吐きすぎ…何、怒ってんの?」
睨み付けてきた大和が、僕の胸ぐらを掴み上げた。
あれ…?デジャヴ…かな?
何時間か前にも、同じ事されなかった?
「勝手にいなくなったくせに、今更後悔ですか?」
傷口に、塩塗りたくって来るなよ…
いつから、話を聞いてたんだ…
コイツが不機嫌になるのは、決まって僕が昔を思い出した時だ。
「僕は…後悔すら、させてもらえないの?」
「悔やめば、過去の自分が変わるのですか?泣いて謝られても、ムカつくだけ…いつまでも、過去に囚われ続けるのは疲れませんか?」
15歳の少年から、どうやったらそんな言葉が出てくるんだよ!
本っ当にコイツは、言葉だけ聞いてると年齢不詳すぎ!
朔也様と違って、可愛さの欠片もない。
「お前に謝った訳でもないのに、ムカつかないで…人って、後悔して成長するらしいよ」
僕の胸ぐらを掴んでいる手が、ゆっくりと離れていく。
だけど、大和の目は僕を睨み付けたままで…
「過ぎた後悔は、更なる禍しか生み出しません。あなた様が、今からなさろうとしている事のように…」
何をするのか知らないのに、《禍》と断言するか…
「知りたい?」