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~絆~大切なモノ  作者: 裕加
第2章 親友との出会い
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《中学1年生編》

まさか…あの約束を、覚えておられるのか?

朔也様の表情を見詰める僕を知ってか知らずか、その瞳は菩提樹の花を懐かしむように見上げている。

9年前当時、僕は13歳で…朔也様は、まだ4歳になったばかりだった。

成長と共に、忘れ去られていてもおかしくない記憶…

覚えてもらえていた事に喜びを感じる一方で、約束を果たさなかった自分への後悔が胸を締め付ける。

人は間違いと後悔を繰り返して、成長する生き物らしい。


だったら…今までの人生において間違いと後悔だらけの僕は、どれだけ成長出来たのだろうか…?

「朔也様、申し訳ございません…」

今更謝っても、取り返しがつかないのは分かってるけれど…

菩提樹の花を見上げていた朔也様が、ゆっくりと僕の方へ視線を向けられた。

「……なぜ、謝る?」

感情の読めない冷めた瞳は、9年間という歳月を否応なく感じさせる。

「僕は…あなた様と交わした約束を、破ってしまいました…」


果たすべき約束も守れなかったくせに、よくも『信じてほしい』などと言えたものだよね…

「……『約束』…なんて、しなければよかった」

ーーズキッ!

心臓が、痛い…

《心》というものは、心臓にあるのかもしれない。

分かっていた事なのに、覚悟していたはずなのに…

「申し訳…ございません…」

謝罪の言葉しか思い浮かばない自分が、情けなくて悔しくて涙が出てきた。

「クリアさん、大丈夫ですか?どこか……」


桐生君が言い終わらない内に、僕の目の前に白いハンカチが差し出された。

差し出したのは、もちろん朔也様で…

「ありがとう、ございます…」

そのハンカチを受け取ると、僕に背を向けて歩き出された。

僕は、朔也様に許される事は出来ないの?

もう、手遅れなのかな…

白いハンカチを握り締めて、更なる涙が頬を伝っていく。

そんな僕と朔也様を何度か見比べた桐生君は、予想もしなかった言葉で朔也様を引き留める。


「み、美空君…事情が分かんない俺が、口挟むべきじゃないかもだけど…ちゃんと本心を言わなきゃ、お互いに誤解してすれ違ったまま終わっちゃうよ?」

本心…?

桐生君は、何を言って……

え…?戻ってきた!?

「……………俺が『約束』なんて言い出さなければ、お前にそんな顔をさせる事もなかったのに…謝ってなんか、ほしくない。今年は、一緒に見れた。それだけで、充分じゃないか…」

今度は嬉しくて、涙が止まらない。

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