序文
何気なくツイッターを覗いていた俺は、ふと手を止めた。
「アザとーのやつ、またやらかしてんなあ」
それは協作仲間を募集するもの。概要はこうだ。
『メインになる物語のあらすじを決める。初期案は王道テンプレでOK(以降A作品)。
それをリレー形式で書き上げてゆく『作者』たちの話(以降B作品)←こっちがメインイベント。
最終的にリレー形式で書き上げた話1本(A作品)、『作者』の物語1本(B作品)が出来上がる。
理想としてはA作品は王道で始めた話を程よく脱線させつつ、きちんとまとまった物語の形式にまとめたい。そのためのプロデューサー役を一人、決定する。
当然、B作品はプロデューサーが一貫した案内人を務めることになる。
↑を基軸として
A作品は完成後に何らかの賞に挑戦、もしくは持ち込み。B作品の結末はその結果までを書いて完結とする。
作品発表の方法
専用共有アカを作る。メンバーにだけパスワードを共有させることにより、作品管理の簡便化。そこに載せる情報はA作品、B作品、それぞれの作者紹介(カッポウでも可?)のみ。』
ばかばかしい、こんなものに誰が参加するというんだ。
確かに発想は面白い。だが、賞を目指すとなると問題が生じるだろう。そもそもリレー小説というのは受け入れてもらえるのか?
しばらく静観していた俺ではあったが。
「ん、参加者が居る?」
参加者は三人。風白狼、百佳、緑、いずれも若手だ。
「そうだろうな。こんな話に乗るなんて、若くなきゃぁ……」
ちょっと待て。俺だって、少なくとも主催者のアザとーよりは若いはずだ。野心だって枯れ果てちゃいないし、お祭り騒ぎに乗れないほど頑固に年老いた訳でもない。
焦燥に駆られて、俺はアザとーに連絡を取る。それに返されたメールには三ページほどの文書が添付されていた。
書かれていたのはいくつかの応募要項と、それに応募した場合のメリット、デメリット。
「なるほど」
その下の一文に、俺はにやりとした。
“①なろう内でのメインがB作品であることを考えれば、A作品は評価シートをもらうことを目的とするのも一案。ただし、あまり規定からはみ出しては「舐めとんのか」言われるのがオチなので、そこは真面目に。
ちなみにA作品に関しては、アザとーは賞に出品するときの代表者が動きやすいように、全権を放棄します。よって表向きは、「リレー形式で掲載していたものを代表者が監修しました」ということになります。
②B作品に関してはプロデューサーさんの著作になるはず。ただしA作品とリンクして掲載するのだから、各々に対する宣伝効果も0ではないと思われる。むしろそちらも条件を選って探せば、出品先はあるのでは?(ただし、完成後)”
どうやら、本気で応募する気はあるようだ。しかも、それさえも踏み石にして作り上げるB作品とは、実に魅力的ではないか。
俺が迷うことなくB作品の作者として名乗りを上げたのは、そういう訳なのだ。