ゴミだらけの星の話
少年は『ヒト』と自称していた。
けれどヒトにはその名を呼んでくれる人はいないし、ヒトが誰かの名を呼ぶこともない。
ヒトは一人だった。
この星はかつては長い繁栄にあり沢山の人間が群れを作り暮らしていたらしいが、現在は人間に代わってゴミがあるだけだ。
ヒトはそこで一人、ゴミから出る悪い化学反応を防ぐ為の防護服を着込み、唯一正常な空間である『ホーム』に備蓄された食糧と水を摂取しながら細々と暮らしていた。
ヒトの暮らしはただ外を見回り他に人間がいないかを探すだけであるが、残念ながらこの環境では見るも汚らわしい虫しか存在せず、海も空も濁りきっていた。
ヒトは所詮少年、どんなゴミが落ちていようがゴミとしてしか判断できず、リサイクルやリユースなどという概念すら知らない。
ただただヒトはゴミの山を崩し、生き物を探し、ホームに戻っては食事をして寝る。
そんな毎日の繰り返す間、とある変化があった。
いつもヒトが行くゴミ山の一つに新たなゴミがあったのだ。
ゴミしかない空間であることに変わりはないが、新たにゴミが増えたということは誰かがそこにゴミを捨てたということで、つまりヒト以外に誰かがいるということである。
疑問も持ったが、ヒトは喜んだ。その新しいゴミの量も大きさもとても虫には運べない。
知恵があり、力もある生物がゴミを捨てた、すなわちこの辺りに人間がいるのだ。
この日ヒトは家に帰ることも忘れそこらじゅうを駆け回った。
ゴミからゴミへ飛び跳ね走り、体を捻り首を回して、何かないか誰かいないかと探し続けた。
けれど誰も見つからず、その日はそのゴミの中で寝てしまった。
ヒトの防護服は強靭なので、どれだけ環境が悪くても兵器だったが、寝心地は最悪だった。
それでも、そこで寝たことは功を奏した。
ヒトが寝ているとガラガラと何かが崩れるような音がして、はっと飛び起きると何かが空からゴミを落としていた。
ヒトは大きな声を出しながら両手を振りそれに存在をアピールすると、その物体はゴミを吐き出すことをやめこちらに飛んできた。
それは一言でいうとUFO、空飛ぶ円盤であった。
すぐにヒトの近くに低下し動きを止めると、ゴミが出るように中から奇妙な生命体が降り立った。
人間サイズの蟻というに近い。全身は白く腹部は異常なほど肥大している、目は大きく、蛾の模様のようなほど威圧感がある。一方腕は細く、しかも足がなく、その二本と垂れた腹部で体を支えているようであった。
最初それが何を言っているか分からず、二人は互いに意味の通じない言葉を吐き出し続けたが、いずれ蟻の方がアプローチをとった。
「この星に知的生物がいたのか!!」
そしてヒトは、蟻をホームに案内した後、蟻のUFOに乗せてもらうことになった。
その中はホームより広く、蟻と同じ姿をした生物が他に四人いた。
そして、ヒトは蟻から様々な話を聞いた。
蟻は、ヒトが知らないこの星の過去の文明よりも遥かに優れた文明を持ち暮らしていた。
するとこの星からみるみる生物が消えていきゴミが増えていった。
色々と調べたところ生存者もいなくなり、資源も使い尽くされていたので蟻たちのゴミ捨て場にすることにした。
「君が救えてよかった」
蟻は心から言う。
「ありがとう」
ヒトも心からの言葉であった。
しかしヒトの祖先は蟻がゴミを捨てている間にも生存者はいたし、現にヒトがいる。
実際は蟻達の怠惰のためにこの星が滅びつつあったことを、知るものはいない。
なんか微妙な落ち。そして宇宙人使うって夢落ちレベルですよね。意味がありそうで、特に意味のない話。




