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私の初ステージ



職人さんが仕立ててくれたドレスと靴は——


想像以上、なんて言葉じゃ足りなかった。


「……すご」


思わず、声が漏れる。


鏡の中の私は、いつもの令嬢のシルエットのまま——

でも、まったく別物だった。


後ろ姿は、従来のドレスと変わらない。

気品も、格式も、きちんと残ってる。


なのに。


前に回った瞬間、印象が変わる。


スカートの前が大胆に開かれていて、

足さばきが軽い。


(これなら——動ける)


一歩、踏み出す。


布が邪魔をしない。

むしろ、動きに合わせて綺麗に流れる。


(いいじゃない)


くるり、とターンしてみる。


遅れて広がるスカート。

その奥で、脚のラインが一瞬だけ見える。


(“見せ方”まで計算されてる)


視線を下ろす。


靴も、完璧だった。


ピンヒールじゃない。

厚底ヒール。


安定感があって、それでいて——


(ちゃんと、脚が長く見える)


軽くステップを踏んでみる。


沈まない。ブレない。怖くない。


(これなら、いける)


胸の奥が、じわっと熱くなる。


そして、もう一度鏡を見る。


そこにいたのは——


ただの悪役令嬢じゃない。


「……まるで、森の妖精みたい」


ぽつり、と呟く。


ふわりと揺れる布。

光を含んだような色合い。


気品と、軽やかさ。


(“フォーレスト”にぴったりじゃない)


にやり、と笑う。


これで衣装は仕上がったわ。

——あとはステージに上がるだけ




待ちに待った、この瞬間。


——私のファーストステージ。


(さあ、見せてあげる)


馬車がゆっくりと止まり、扉が開く。


差し込む光。


深く息を吸って——踏み出した。


城の大広間。


視界いっぱいに広がる人、人、人。


(……広い)


我が家のホールも十分すぎるほど広かったけど、比べものにならない。


高い天井。無数の視線。


でも——


(最高じゃない)


口元が自然と緩む。


これだけの“観客”。


私のステージには、十分すぎる。


一歩、また一歩と歩くたびに、視線が集まるのが分かる。


最初は、ただの好奇の目。


でも。


「……あれは、フォーレスト様……?」


「なに、あのドレス……」


ざわめきが、波のように広がる。


(来た)


ゆっくりと中央に立つ。


全員の視線が、こちらに向いたのを感じて——


スカートの裾をつまむ。


「ごきげんよう。本日はお招きいただき、ありがとうございます」


優雅に、一礼。


その瞬間。


——空気が、止まった。


(やっぱりね)


視線が突き刺さる。


驚き、戸惑い、そして——


興味。


(いい反応)


にやり、と心の中で笑う。


(ちゃんと“ざわついてる”)


ただの違和感じゃない。


“見てしまう違和感”。


それが、一番強い。


(だったら——)


次は、もっと引き込む。


「本日は、とても楽しみにしておりましたの」


顔を上げて、柔らかく微笑む。


——観客に向けて。


(さあ)


「ここからが、本番よ」



(まずは今回の“コラボ相手”にご挨拶しないとね)


グロース様はどこかしら、と視線を巡らせた、その時。


「あら、フォーレスト様」


——聞いたことのある声


振り向けば、予想通りの顔。


「そのはしたないお足元は……どういうおつもりかしら?」


(やっぱりいるわよね、こういうアンチ)


軽くため息を飲み込む。


「ごきげんよう、ヴォーリエ様。お久しぶりですわね」


にこり、と微笑む。


相手の棘には触れない。


これ、基本。


でも…


「ちょっと、私の質問に答えなさいよ」


(……あー、めんどくさいタイプ)


無視して離れようと、一歩踏み出した、その瞬間。


——嫌な気配。


(あ)


視界の端で、何かが動いた。


次の瞬間。


ぱしゃっ——


冷たい水が、顔にかかる。


一瞬、会場が静まり返る。


(……へえ)


ゆっくりと瞬きをする。


頬を伝う水滴。


濡れた前髪。


(なるほどね)

一瞬だけ、思考が止まる。


でも——すぐに戻る。


(この程度)


こんなハプニング、前世で何度も経験してきた。


水をかけられるくらい、まだ優しい方。


——ファン同士が喧嘩して、刃物が飛んできたこともある。


——そして、最後は。


(……まあ、死んだしね)


それに比べれば。


「大したことないわ」


ぽつりと呟く。


指で前髪をかき上げる。


濡れた髪を整えて——


視線を上げる。


——目の前(観客)へ。


「……ふふ」


小さく、笑みがこぼれる。


(むしろ——)


頬を伝う水が、少しだけ冷たい。


「これからの熱気を考えれば、ちょうどいいくらいですわね」


柔らかく微笑む。


完全に、“見せる笑顔”。


「何、笑っているのよ!」


ヴォーリエの声が、少しだけ上ずる。


(ああ)


分かる。


こういう時、どう反応していいか分からなくなるのよね。


——想定外だから。


でも。


(私は違う)


一歩、踏み出す。


「ねえ、ヴォーリエ様」


にこり、と笑う。


「せっかくですもの」


ほんの少しだけ、首を傾げる。


「もう少し、“盛り上げて”くださらない?」


——ちょうどその時。


楽団の音が切り替わる。


次の曲が、ゆるやかに流れ始めた。


(タイミング、最高)


私は一歩踏み出し——


ヴォーリエの手を取った。


「……え?」


驚きで固まる彼女を、そのまま引き寄せる。


「お付き合いいただけますわよね?」


にこり、と微笑む。


拒否なんてさせない。


そのまま、音に合わせて一歩。


(重いドレス。でも——)


問題ない。


この衣装は、“動ける”ように作ってある。


足が自然に出る。


スカートが、遅れてふわりと広がる。


「っ……!」


ヴォーリエの足がもつれる。


でも構わない。


(ごめんなさいね)


もう一歩、踏み込む。


くるり、とターン。


開いたスカートの奥で、脚のラインが一瞬だけ見える。


(視線、集まってる)


感じる。


空気が、変わる。


ざわめきが、どよめきに変わっていく。


「……なに、あれ」


「フォーレスト様……?」


最初は困惑。


でも——すぐに変わる。


(いい流れ)


ヴォーリエを軸に、軽く回す。


完全にリードしているのは、私。


彼女はついてくるだけ。


(“引き立て役”、悪く思わないでね)


ステップを刻む。


音に乗せる。


視線を散らす。


そして——集める。


「……っ」


誰かが、息を呑んだ。


その瞬間。


(——掴んだ)


私は、笑う。





——完全に、“ステージの中心”で。





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