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舞踏会のドレスって窮屈なのよね



「舞踏会に着ていく衣装は何になさいますか?」


侍女の言葉に、私は軽くため息をついた。


(問題はそこなのよね)


令嬢のドレスって、どうしても重くなる。


ロングスカートにパニエ、装飾過多。

動く前提じゃない作り。


(生誕祭で着たあのドレス……ほんと地獄だったわ)


一歩動くたびに布が絡むし、視界は狭いし。

あれで“優雅に振る舞え”って、無茶にもほどがある。


とはいえ。


(ミニスカートは論外)


家の品位がどうこう言われるのは面倒。


(……100歩譲ってドレスは、まあいいとして)


問題は、もう一つ。


私は足元をちらりと見た。


細くて高い、ピンヒール。


(これで踊れって?無理でしょ)


地下時代でもヒールは履いたけど、あれは“踊れる設計”だった。

重心も安定してたし、何より転ばない。


でもこれは違う。


完全に“見せるためだけの靴”。


(そもそも——)


「ねえ」


「はい、お嬢様」


「どうしてピンヒールを履く必要があるの?」


侍女は一瞬きょとんとした後、当然のように答えた。


「それが淑女の嗜みでございますから」


(出たわね、“そういうものだから”理論)


私は小さく笑った。


——だったら、変えてあげる。


「じゃあ、その“嗜み”ってやつ。少しだけ崩しても問題ないわよね?」


「……え?」


「品位は保つ。でも、動けるようにする」


くるり、とその場で軽くターンしてみせる。


ドレスの裾が遅れてついてくる。

やっぱり重い。


(このままじゃ、魅せられない)


——なら、作るしかない。


「仕立て屋、呼んで」


「仕立て屋、でございますか?」


「ええ。“最高の衣装”を作るの」


侍女が息を呑む気配がした。


でも構わない。


(舞台に立つなら、動けない衣装なんて論外)


私はにやりと笑う。


——舞踏会は、ただの社交場じゃない。


「ステージなんだから」




「フォーレスト様、そのようなドレスや靴はわたくしめには作れません」


「なぜ?」


一歩、距離を詰める。


「あなたほどの腕なら、できるでしょう?」


職人は視線を逸らした。


「作れる作れないの問題ではございません。そのような装いは……淑女の嗜みに反します」


(あー、出た)


“そういうものだから”ってやつ。


正直、一番めんどくさい。


でも——

引く気はない。


「ねえ、職人さん」


声のトーンを少しだけ落とす。


「あなた、この前息子さんが有名校に受かったんですってね」


ぴくり、と肩が揺れた。


「……どこでそれを」


「素敵じゃない。努力が実ったのね」


にこり、と笑う。


「ちょうど私の従兄弟もその学校に通っておりますの。学年は違いますけれど……“仲良く”できるといいですわね?」


空気が、少しだけ張り詰める。

——でも、それだけじゃない。


「それに」


私は軽くドレスの裾を摘んだ。


「あなたの素敵な技術、こんな“古い形”に閉じ込めておくのはもったいないわ」


「……え?」


「動けないドレス。歩きづらい靴。見せるだけの装い」


首を傾げて、微笑む。


「それ、本当に“美しい”のかしら?」


職人の目が、わずかに揺れる。


(よし、入った)


「私はね、“動いて魅せたい”の」


くるり、と小さくターンする。


重たい布が遅れてついてくる。


「このままじゃ、ただの人形よ」


視線をまっすぐ向ける。


「でもあなたなら、“生きたドレス”を作れるんじゃない?」


沈黙。


数秒。


そして——


「……もし」


職人が、低く呟いた。


「もし、それが完成したとして

それを……あなたは、どこで?」


ふっと、笑う。


——決まってるじゃない。


「ステージで使うわ」


「すてーじ……?」


「来月の舞踏会よ」


一歩、引いて。


堂々と宣言する。


「貴族中が集まる場所で、“今までにない淑女”を見せてあげる」


間を置いて、最後に一押し。


「成功したら——あなたの名も、一気に広まるわよ」


職人の呼吸が、変わる。


迷いと、恐れと——少しの興奮。


私はにやりと笑った。


「で?それでもまだ、“作れない”って言うのかしら?」


沈黙。


張り詰めた空気が、数秒続いて——


「……そこまでおっしゃられるなら」


ようやく、職人が息を吐いた。


(……よし)


内心で小さく拳を握る。


(頑固なのは、どこも同じね)


地下アイドル時代にもいた。


こだわりが強くて、簡単には首を縦に振らない製作者。


あの時は、今みたいに立場も権力もないから——

ただひたすら語った。


その衣装を着たら、どれだけ輝けるか。

どんな景色が見えるか。


(……懐かしいわね)


今回は、少しやり方が違ったけど。


でも。


(目指してる場所は、同じよ)


「とりあえず採寸いたします。そこにお立ちください」


職人の声はまだ硬い。


「どうなっても、私は責任取りませんからね」


「ええ、もちろん」


私はまっすぐ頷いた。


「責任は、全部私が持つわ」


一歩、前に出る。


「その代わり——」


ふっと笑う。




「最高のステージにして見せますわ」





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